タコさんウィンナー

スリー・ビルボードのタコさんウィンナーのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.1
こいつは今まで出会ったことないタイプのおもしろさ。一見散漫にも見える脚本はしかし着実に、人間を描き出す。
映画のはじまりのとき、この結末を予測した人はいただろうか。

とはいっても、大どんでん返しがあるという類でもない。

ただただ、緻密に人間を描いていた。恐怖や不満や償いの気持ち、満たされないなにかを怒りに乗せて周りに振りまくしかない弱さを持った人たち。彼らの突拍子も無い行動はヤバイやつらとして私たちを惹きつける。
でも、本当にそうか?
彼らは普遍的な感情を持った人なんじゃないだろうか。やり場のない思いを、どうしたらいいかわからない。許しを探して彷徨うアウトロー。それは多くの人が自分の心情を重ねられるキャラクターじゃないだろうか。

人間くさいところを掘り下げていくからこそ、最初と最後でそれぞれの人物への印象が変わる。キャラクター自身も変わっていく。先の読めない怒涛の展開の中で、最後にスタート時からは考えられない2人が戦友のようになり、わずかな希望がにじむ

ここで終わり?と最初は思ったが、これが正解だと思う。

演技、演出、その他諸々…見るべきところは多くある。素晴らしいメンバーで作られた作品だと感じた。
でもだからこそ、まず彼らを見てほしいと思う。多少難解だが眠くない時に見れば大丈夫。ちょっと食らいついてでも見たい映画です。