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スリー・ビルボードのbluemomday0105のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2
「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」と書かれた3枚の看板。
アメリカの田舎町に突如現れたこの看板、未だ犯人の手がかりを掴めない警察に業を煮やした被害者の母親ミルドレッドが広告枠を買い、掲出したものだった。この3枚の看板(スリー・ビルボード)が、平和で時が止まったような町を変容させていく。

サスペンスもの、またはマンチェスター・バイ・ザ・シーのような田舎町ののどかに膿んだ情景を描いたものかと思いきや、全然違うものだった。映画なんだけど、すごく面白い小説を読んだ後のような余韻。桐野夏生や宮部みゆきの小説のような緊迫感と抜け。
話がどう転がるかわからない! 評判いいなと思って前知識入れず見に行ったのも幸いしました。

ミズーリといえばGotGの主人公ピーター・クイルの育った町、くらいの知識?しかなかった私ですが、所謂世界のどこにでもある地方の町。ポリコレ的な思想も世界の趨勢も知らずに生きて死んでいく人たちの町。
隣人や同僚のことは何でも筒抜けで、都会じゃ眉をひそめられるようなゲスい差別的な冗談も通じる、若者が「絶対出ていってやる」と思うような町。
ただ、本作の主要人物のミルドレッドやウィロビー、粗暴な警官のディクソンのような中年以降の世代には、出ていってもどうにもならずで。安定とは違う「そこに残された人たち」の物語。

ウィロビー、ミルドレッドの友人ジェームズ(小人症の俳優ピーター・ディングレイジ! こういう人が演技派俳優として活躍されてるの、アメリカ懐広いなと思う)以外の中年白人はだいたいクズ。まるで「世界のジャイアンたるアメリカの白人なんて、そんな立派なもんじゃないだろ」と言わんばかりの描き方。監督がイギリス人なのもあるのかな?

一方、今作の核となる言葉をミルドレッドが蔑む「元旦那の、アホで臭い19歳の恋人」に言わせたり、それとも紐付けられる行動を広告会社のレッドにさせたり。あのオレンジジュースのシーンしみじみよかったな。
旧来の人達が復讐に囚われるなか、若者や外から来た人が「復讐の連鎖」を止めようとするのは、キャプテン・アメリカ/シビルウォーでもありましたね…。

脚本も俳優の演技もクオリティ高いのですが、劇中の音楽もよかった。必要以上に衝撃的だったり深刻にならない印象なのは、音楽の力もあるのかも。