映画を見る猫

スリー・ビルボードの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.8
誰一人、好感をもてる登場人物がいない群像劇だった。
皆、他人のせい。
他者に対する責任転嫁は止まらず、過去から何も学ばず、何度も同じことを繰り返す。
物語に出てくる人物が皆異なる立場にありながら、驚くほど同じ心的行動をとっていて呆れてくるほどだ。
怒りの連鎖が延々と方向を代えていくのを見守りながら、これは良くできたブラックコメディなのかしら?と苦笑を押さえきれなかった。
結末もまた然りで、落胆が大きい。彼らは他人を傷つけ裁くことでしか、自分を正当化できないのだろうか?
まるでオセロの駒のような人物描写だ。あっという間にひっくり返って白になったり、黒になったり。
けれども結局、その大きさも形も変わることはなく画一的だ。
脚本として、よく出来てるといえば、よく出来てる。 
よく"出来すぎた"脚本の中で、各々の人物が軽やかに動き、似たような感情の連鎖が非常に滑らかに続いていく。
明白で、解釈は容易い。
けれども人間って、もっと複雑で多様で曖昧なものなんじゃないかしら、と不満を抱かずにはいられなかった。