Mossmouth

スリー・ビルボードのMossmouthのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

とても評するのが難しい内容だ。

娘をレイプされて殺された母親。
いつまでたっても犯人を検挙できない警察を批判するために彼女が出した3つの看板と、それに対する田舎町の人々の反応。
批判対象の中心たる、街の尊敬を集める署長。
母親と契約し看板を出したことで暴力警官に目をつけられる若き看板屋。
署長を尊敬し、それがゆえに看板屋をつけ狙い看板を出した母親と対立する暴力警官。
一連の騒動の煽りを受けふさぎ込む母親の息子。
若い愛人を作りながらも看板のことで怒る母親の元夫。

これらの登場人物が互いの思惑、気持ち、そして行動が軋轢を生み、事態は展開していく。
その根底には人種や職業、立場や境遇から来る愛憎があり、人物描写に深みを与えている。

この文章を書いていて改めてこの映画を思い返すと、何よりも際立つのはまさに「人物描写の深さ」かもしれない。
善人はただの善人ではないし、悪人もただの悪人ではない。
そもそも、善人も悪人もいないのだ。
当たり前の話だが、人間は多面性を持っているのだ。
その多面性とは、自らの性別や人種や職業や立場や生い立ちから醸成されたもので、それが彼らの人格を形成している。

そうした深みを伴って描写された人間たちが織りなすドラマだからこそ、この作品は素晴らしいのだと思う。
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