NAOKI

スリー・ビルボードのNAOKIのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.8
小学生の頃、近所に「新町の鬼ババ」と子供たちから恐れられていた女性がいた。家の前の花壇の手入れをいつもしていて、登下校中の小学生が悪ふざけをして騒いだりすると鬼の形相で怒ったりした。

「新町の鬼ババ」は白髪混じりのボサボサ頭に顔にはひどい傷跡があったので子供たちの間で彼女に捕まると庭の小屋に閉じ込められて奴隷にされてしまうみたいな都市伝説のような話まであった。

ある日事件は起こった…
クラスのお調子者のミツル君が鬼ババの花壇に子猫がいるのを見つけて花壇に侵入してる時、急に玄関が開いて鬼ババが出てきた。
「わぁ!」
ミツル君は飛んで逃げて車道まではみ出したところへ原チャリと衝突した…ものすごい音がした。
おれたちは凍りついて動けなかった💦
その時何かがものすごい勢いで横たわるミツル君の脇にしゃがみこんだ。
鬼ババだった…

「スリービルボード」
この映画…不謹慎な言い方になるけど面白い😁💦読めない展開にグイグイ引き込まれる…だけどおれはどうにも妙な違和感を感じてしょうがなかった。
登場人物たちの行動がいちいちしっくり来ない💦それはすべて負の連鎖だからだと気づいた。

日本にだって負の連鎖はある…だけど日本人は負の連鎖を割りと嫌うよね…現実はともあれ、せめて映画の中くらいは負の連鎖を断ち切ってほしいと心のどこかで思ってる気がする。

しかしこの映画は主人公をはじめ登場人物たちがことごとく「負の連鎖」に取りつかれたようにとんでもない行動を起こしていく。もちろんこの連鎖を断ち切ろうとするシーンもある…オレンジジュースやレストランでの酒瓶はそれを象徴していて…それはそれで感動的なシーンになっていると思う。しかし、どちらかと言うと「負の連鎖」は時に人間が生きて行くための原動力になりうる…と言わんばかりの展開を見せる。

アメリカ人と日本人の違いだろうな…
自分の大事な人の命が奪われ…犯人が不当に軽い刑を受けた場合、日本人は怒りはすれど結局は泣き寝入りだろう…アメリカ人は犯人の護送中に銃撃して殺しそうだ…この違い💦
まぁ…映画だと思えば面白いし底知れぬパワーを感じるんだけどカタルシスはない…
三つの広告看板は何を意味するのだろうか?

それから「新町の鬼ババ」の動きは素晴らしかった…起き上がろうとするミツル君を制して話しかけ、状態をすばやくチェックしている様子だった。やって来た救急隊員に説明してミツル君を引き渡し警察に説明し…最後におれたちを追い払った😁💦

あとで親に聞いた話では、鬼ババは昔…この町で看護師をしていたが色々と不幸なことがあっていつしか近所付き合いもなくなったらしい…
「かわいそうな人なんだからあんたたちも優しくしてやらにゃいかんよ」
母親はそういった。

幸いミツル君はたいした怪我もなくその日のうちに帰宅した。
次の日…ミツル君は偉かったね…花壇にいる鬼ババのところへ行くとガチガチに緊張しながら
「お早うございます…き…昨日はありがとうございました」
と言った。
「新町の鬼ババ」は手を止めてミツル君を見るとニコリともせずにこう言った…

「はい、おはよう」
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