ヴェルヴェっちょ

スリー・ビルボードのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2
この映画は安易な理解を阻む。
筋を追うのは難しくないが、描かれるシーンが暗示し、象徴しているものは深い。

ミズーリ州の架空の田舎町エビング。
寂れた道路に掲示された巨大な3枚の広告看板。そこには「RAPED WHILE DYING(レイプされて死亡)」「AND STILL NO ARRESTS?(未だ犯人が捕まらない)」「HOW COME,CHIEF WILLOUGHBY?(どうして、ウィロビー署長)」と警察への批判メッセージが書かれていた。
設置したのは、7カ月前に何者かに娘アンジェラを殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)。犯人は一向に捕まらず、何の進展もない捜査状況に腹を立て、警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)にケンカを売ったのだ。
署長を敬愛する部下のディクソン(サム・ロックウェル)や町の人々に脅されても、ミルドレッドは一歩も引かない。 その日を境に、次々と不穏な事件が起こり始め、事態は予想外の方向へと向かっていく…。

まず、3枚の巨大な広告板が具体的でありつつ、何とも抽象的。赤地に黒文字で書かれた忿怒は、映画の中心にどっしりと腰を据えている。
むしろ、看板に翻弄されるのは人間の方。
憎かったはずの相手が、逆に一番の理解者だったりする皮肉。
あぁ、この時点で生半可な理解を超えた作品なのだと、打ちのめされる。

つなぎの作業服をまるで戦闘服のようにまとって警察に対峙するミルドレッド。がんで余命短いエビング署のウィロビー署長。実は、この2人、対立しているようでいて、互いを深く知り抜いている。
そしてマザコンのディクソン悪徳捜査官は、腹癒せに広告屋を暴行するが…。

主要3人が織りなす物語が、受ける印象流動化させる。何度鑑賞しても違った感想をもつことになるだろう。
参った。