ゆず

スリー・ビルボードのゆずのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.0
犯人不在で進む物語。
被害者遺族である母親と、彼女に名指しで非難された警察署長、それに腹を立てる粗暴な警官、3人のそれぞれの生き様が語られる。
解決されなかった事件は、残された者たちに何をもたらすのか。
果たされなかった正義は、どこへ向かうのか。

犯人不在のまま遺族と警察の対立が描かれる。これ自体、物語として面白い着眼点だと思う。
なぜなら現実でも、犯人の犯行よりも現場の防犯体制などが取り沙汰されることがしばしばあるからだ。
例えば先日起こった新幹線殺傷事件でも、事件後ネットに溢れていたのは、犯人への怒りよりも公共機関の防犯体制への不満やその反論だった。
一番悪いのはもちろん犯人だが、まるで2番目に悪いのは誰なのか、バッシング対象を探すような風潮がある。
犯人が捕まっていてさえこうなのだから、犯人の見当も付いてない劇中で母親ミルドレッドが警察へ怒りをぶつけたのは、至極真っ当な対応に思えてくる。

犯人にぶつけるべき怒りを、別のものにぶつけてしまう。こんなことは実はけっこう頻繁に起こってるのかもしれない。万引きに気づかなかった店員が叱責されたり、児童虐待を止められなかった相談所職員が槍玉に上げられたり、といったことは茶飯事なのかもしれない。
犯罪に巻き込まれただけで責任を問われる社会。この映画はそんな現代社会を切り取ってもいるのだろう。



2/22 スリー・ビルボード 字幕 @TOHOシネマズ仙台
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