勝ったのは農民だ

スリー・ビルボードの勝ったのは農民だのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

評判の高さも納得の傑作です。

「ボタンのかけ違いが悲劇を生む」ってストーリーの映画はよくあると思いますが、そのなかでも今作はかなり完成度の高い作品だと思います。


それにしても皮肉な話です。
観終わった後、スッキリするような映画じゃありません。

結局、犯人は分からないままですし、
最後、仮にあの2人があいつを殺して殺人犯になることを予想すると、これはバッドエンドに向かう作品にも思えます。


おそらく殺すまではいかないまでも、劇中でのそれまでの2人の行動を考えると、あいつをボコボコにする程度のことは予想できます。その前
にあいつは7ドル払ってくれるでしょうかね❓
「怒りは怒りを来す」っていう言葉がまさに今作を象徴しています。泥沼の戦争です。


でも、スッキリする話ではないんですが、意外と後味は悪くないんですよね…。
「道々考えるといい」ってセリフがかなり希望が持てるエンディングを示しています。


俳優の演技の点では、
比較対象になる他のノミネート作品は観ていませんが、
フランシス・マクドーマンドがアカデミー最優秀主演女優賞を、サム・ロックウェルが最優秀助演男優賞を受賞するだけの納得の演技をしてます。

自分は英語の発音が分からないため、海外の俳優の演技の上手下手はイマイチよく分かりませんが、それでも、この2人と、警察署長を演じたウディ・ハレルソンの3人の演技が上手いのはなんとなく分かります。

恥ずかしながら、自分はこの3人の出てる過去作をほとんど観たことありません。唯一、サム・ロックウェルは『グリーン・マイル』の時に観ましたから、それと今作で完全にクズ人間の役のイメージが固まりました。

でも、今作の良いところは、
「サム・ロックウェル扮するディクソンみたいなクズだと思われている人間にも魂の根底には五分の良心はある」
ということをちゃんと描いているところです。

ずっと、ただ単にキレやすい問題児だと思っていた男が、大火傷しながらもデータを
大事に守るところや、ボコボコにされながらもレイプ犯のDNAをとっておくシーンは感動します。
それまでの警察官としては無茶苦茶な行動を考えると、それでチャラになるとは思えませんけど。

あと、死んだ署長の手紙を読むシーンが3回ありましたが、そのうち2回は、署長の人柄の良さがわかる感動的なシーンです。
この映画に限らず、死んだ人間からの手紙を読むシーンって、ベタだと思いますけど泣けます。


今作は、ハマるハマらないは個人差あると思いますが、少なくとも自分は観てる間、1時間55分、緊張感が持続して全く退屈しませんでした。
「敵ばかりじゃないですよ」
「怒りは怒りを来す」
「道々考えるといい」
とか、印象に残るセリフもたくさんありました。また見返したいタイプの作品です。