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スリー・ビルボードのgolgomanのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ミズーリ州の田舎町で起こった少女の殺人事件。被害者の母親であるミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、いつまでも事件を解決出来ない警察に業を煮やし、3枚の看板にウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)を批判する内容の広告を出す。
ミルドレッド、ウィロビー、そしてウィロビーを慕う無能でマザコンのクズ警官ディクソン(サム・ロックウェル)。そんな3人を中心としたお話。


とーっても上手に出来た話だなーって思った。そらもうあからさま過ぎるくらいに。
犯人は誰だとか、そういう事じゃないんだねこの映画。観る前は単なる復讐劇と思ってたけどさ。
愛だとか、怒りだとか、赦しだとか、そういう人間的な事を描いた話だったと思う。
後半それがもろに描かれてて、ちょっとゾワってなっちゃったけど。
展開も読めなかったし、単調なようでいて飽きさせない程よいテンポ、そんで何より主要の3人の役者さん達。
ほんと良かった。



【ウィロビーが命を絶った理由】
自分の命の終焉が見えて絶望したわけじゃなく、仕事に疲れたわけでもない。
衰弱していく自分の看病を続ける家族を思って、そしてそれが最後の思い出として残ってしまう事を不憫に思ったし、自分自身もそれはイヤだったから。このシーンが自分の中で一番愛を感じたシーンだった。
自分がウィロビーの立場だったらどうするかなーってちょっと考えさせられたりした。
なんにせよ、彼はこのお話の基盤となるキャラクターだったと思う。


【ミルドレッドの行動】
犯人を捕まえたかった。もちろんそれはそうだと思うけど、それ以上に彼女を突き動かしてた感情は後悔の念だったんじゃないかと思う。娘との最後の会話で放った言葉が『レイプされればいい』。そしてそれが現実となってしまう。母親としてこれほど後悔する事はないんじゃなかろうか。
いつまでも事件を解決してくれない警察に対する苛立ち。こうしてる間にもどこかでのうのうと生きてる犯人への怒り。
それ以上に娘に対する申し訳なさと、自分に対する怒り。後悔。娘の為に何かをする事で赦しを得たかったんじゃないかな。


【焼かれてしまった3枚の看板】
説明するまでもなくこの3枚の看板はミルドレッド、ウィロビー、ディクソンの3人を表してるんでしょうな。激しく燃える看板の炎を必死に消そうとするミルドレッド。なんとか2枚の看板の炎を消すも、最後の1枚は燃えきってしまう。それはウィロビーの名が書かれた1枚。
燃えきってしまったというよりも、ミルドレッドはその3枚目の看板の消火を諦めた感じじゃない?膝から崩れ落ちてさ。
なんだろう、うまく説明できないけど、あの看板は主要の3人を象徴するのと同時に、ミルドレッドの感情も表してると思うのよね。その看板が燃えてしまう。そんでさウィロビーって愛とか赦しを象徴してた感じがするのよ。その看板を前に膝をついてるミルドレッド。なんというか、怒りに任せて行動するのはやめなさいよ。みたいな事を表現してたんじゃないかなって思った。わかんないけど。なんかそんな感じに見えた。
だもんで個人的な解釈だけど、最後ミルドレッドはあの男を殺すには至らなかったんじゃないかなと。ディクソンに気持ちを確認してたから迷いはあったと思う。でもディクソンのあまり気乗りしないけど、、、という返答を受けて、『道々考えましょ』の時点で答えは固まったんだと思う。
ただ、個人的な思いで言うと、犯人とっ捕まえて銃でズドンのがスッキリしちゃうかな。
人間だもの。


【一点だけ腑に落ちない点】
あのレイプ男がミルドレッドのとこに来たシーンさ、結局あいつは犯人じゃなかったわけじゃん?じゃ何しに来たのよ?って事さ。あいつは犯人じゃなかったけど、物語の結末としては必要な人物だった。それを印象付ける為にあのシーンがあったんじゃないかなーって。だってそれ以外にあいつがミルドレッドのとこに行く理由あるかね?ちょっと強引だなーって思っちゃったんだけど、どうだろか?


何度も言うけど、上手すぎるくらい上手く出来たお話でした。(嫌味じゃないよ。)
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