踊る猫

スリー・ビルボードの踊る猫のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.5
こちらの期待値が高過ぎたからなのかもしれないが、あまり心に響いて来る映画だとは思えなかった。発端となるレイプ事件について丁寧に描かれないため、一体それによって娘を失った母の怒りがどれくらいのものなのか分かりにくい印象を受けたのだ。回想シーンを挟むことでそうした弊害は防げたはずで、だからこのあたりも監督の計算ずくなのだろうと思うのだけれど……観ながら想起したのはデヴィッド・フィンチャー『ゾディアック』だったのだけれど、人間の心理のどす黒い部分を描くことには成功していると思う。正義の名のもとに手段を選ばず悪事に手を染めることの虚しさ、そして和解……そこまで持っていくためのストーリーの説得力が今ひとつ弱いと感じられる。もう少し「ベタ」な話に持っていっても良かったのではないか。主張したいことは分かるだけに、この映画を手放しで礼賛することは出来ない。
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