おーたむ

スリー・ビルボードのおーたむのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.7
昨年のアカデミー賞で主演女優、助演男優の両賞を獲得した作品ということで、見たいなと思ってました。
凄かったです。
こういう話を面白く出来るのは凄い。

殺人の被害者遺族が事件を解決するために行動を起こす話ですが、なんというか、ぜんぜん一筋縄ではいきません。
被害者の母は進まない捜査に憤り、警察署長宛ての抗議文を貼り出しますが、これが街の住民や家族から総すかんを食うというのが、もう普通と違います。
これを受けた警察署長がもう一度事件を見直そうとするも、末期癌の影響もあり物語中盤で自殺してしまう…という筋も、輪をかけて普通じゃありません。
そもそも本作は事件の犯人へと迫る気配が一向になく、主人公の起こした行動が波紋を広げていく様子を丹念に描いているだけ、という点でも変化球。
「こういうストーリーだ」というパターンを当てはめられないので、作品が向かっている方向がわからず、どうなるんだろう?と興味をかきたてられました。

正直、本作の主人公は、理不尽に娘を喪ったという事情を差し引いて考えても、共感しづらい人物です。
後半に主人公格となる不良警官も然り。
ただ、個人的に感じた本作の面白さは、登場人物の強固な固定観念が覆され、真実が現れる瞬間であり、それを印象的に描くのに、彼らの頑なで独善的な性格は、よく効いていたように思います。
そうした、感情移入しにくい人物たちに血肉を与え、その行動に説得力をもたらしていた俳優陣も、さすがでした。
そりゃ、受賞もしますよね。

ラストも、一歩だけ前に進んだ二人の姿…と見ることも出来る一方で、無関係の人間相手に私刑を行うことで溜飲を下げようとしている人間たちのようにも見え、スッキリしていいのか、モヤモヤするべきなのか、判然としません。
しかし、たしかに面白かったです。
この、一筋縄で行かない感じが、面白かったし、凄かったです。
マーティン・マクドナー監督、今後に注目したいと思います。
おーたむ

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