和桜

スリー・ビルボードの和桜のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.0
本作でマーティン・マクドナー監督の名前が知れ渡ったことがめちゃくちゃ嬉しい!
この監督は元々演劇の世界で活躍する劇作家。そこで地位を確立した後に短編映画を撮り、それがすぐさまアカデミー短編映画賞を受賞。次に挑戦した長編映画『ヒットマンズ・レクイエム』で今度はアカデミー賞脚本賞を受賞するという快挙。
しかし、日本では何故か劇場公開されなかった不遇の人物でもあった。

この一作目の『ヒットマンズ・レクイエム』がとにかく好きで、初めて見たときは衝撃を受けた。評価は高くない二作目『セブン・サイコパス』も大好きで、三作目であるこの作品も趣はかなり変えてきてるけど通じるテーマみたいなものがある。
マクドナー監督の作品では常に徹底した「自己犠牲」で物語が加速し始める。
一作目では、キリスト教という自殺タブーな宗教観を語りながら、罪の意識に囚われた人物が自殺と救いの間で揺れ動く姿。
二作目では、他者を救うための行為は自殺と呼べるのかという疑問を残しながら、犠牲の中にこそ光を見出す姿勢が描かれた。
両方に共通してるのは「自己犠牲により誰かを救おうとする人物」の存在で、その姿に毎作毎作強く心惹かれてしまう。 この作品の解釈はかなり幅広く成されていたけど、過去作品と比べるとどちらの意味でも取れて面白い。その意味でどちらか断定する話しではなかったようにも思う。

しかしマーティン・マクドナー監督にしろ、ヨルゴス・ランティモス監督にしろ、少し個性を抑えただけで様々な賞を総なめしていくのは凄いよね。アカデミー賞に寄せてきたなんて言われるけど、それで本当にノミネートまでいくんだから文句なんて言えない。この後彼らがどんな方向性で作品を作るのかが楽しみで待ち遠しい。
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