somaddesign

ダンボのsomaddesignのレビュー・感想・評価

ダンボ(2019年製作の映画)
5.0
意義にしろ、意味にしろリブートのお手本。
マイケル・キートンのヅラギャグスルーに、見た目で人を貶める笑いを取らないハリウッドの最新コンプラを見た

:::::::::::

サーカス団に飼われ、大きな耳を使って空を飛ぶことができる小さなゾウの子ども「ダンボ」が、引き離された母親を助けるため、サーカス団の家族の力を借りて新たな一歩を踏み出す姿を描いた。

:::::::::::

相変わらず「CGで実写映画化!」に違和感がある。
映画宣伝の世界ではもうCGは実写なんだろうか?

『誰もが知る名作アニメ』のはずだけど、よく考えたら若い世代の人はキャラは知ってても物語は見たことなくて当たり前。通底するメッセージは時代や世代をやすやすと越えて、尚今現在形にブラッシュアップしてみせた、リブートのあるべき姿を見せてもらった気分。

よく知られたアニメ版の物語が早々に終わってしまって驚いた。アニメ版で描いたことを一通りなぞって、描き終わってからが今作の本編。異形・異能の存在が自分の特別さを自覚して、自分の欠点を武器に変えて存在意義を獲得してく……。
思えば監督ティム・バートンの自身の実人生そのものので、フィルモグラフィを通じて「異形/異能扱いされるせいで、周囲から阻害される存在」の映画ばっかり撮ってる。
前半パートでアニメ版との大きな違いは、ダンボが空を飛ぶ事でバカにしてた人達を見返す描き方だったのが、周囲の理解を得る方向に変化してることかも。

後半部はネタバレを避けて。
みんなそれぞれに欠けていて、誰かの欠損を埋めてあげる事で自分たちの穴も埋まる。お互いがそれぞれのカケラであるという様な、美しいメッセージになってくのがディズニーぽくていい。

ティム・バートンの気合が感じられるのは、主要キャストをダニー・デヴィートを筆頭にマイケル・キートン(どちらも「バットマン」「バットマンリターンズ」)エヴァ・グリーン(「ミス・ペレグリン」)といった勝手知ったるキャストで固めて、自身の世界観を十全に表現できる体制にしてる。なんならホルトもジョニー・デップにしたかったんじゃなかろうか。ファンタビみたいに途中で、コリン・ファレルから変身しても面白かったかも。


マイケル・キートン演じる拝金主義で冷血漢のヴァンデヴァー卿の姿格好が、前のディズニーCEOマイケル・アイズナーがヅラかぶった姿に見えるのは考えすぎだろか。現場まで口出すわりに安直で危険なクリエイションで現場を疲弊させるトップダウンな上司像って、ほぼあの人そのままっていうか、どこの国のどの会社にも似た人入るっていう普遍性のことなのかしら。うーん。

ピエールショックで大騒動な昨今、ディズニーのファミリー映画で再びピングエレファントが見られたのが愉快。お酒や麻薬の酩酊状態の隠語で、旧作だと酔っ払ったダンボが見るアシッドな世界を、今作だとシラフで体験しちゃえてお得な感じ。

30本目
somaddesign

somaddesign