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ダンボのFilmojaのレビュー・感想・評価

ダンボ(2019年製作の映画)
3.5
先日、娘の入学式(新1年生)を終え、お祝いも兼ねて家族記念にと映画館へ。
ディズニー不朽の名作「ダンボ」を、奇才ティム・バートンが実写リメイク。
アニメ版とは違うオリジナル脚本で、少し不思議でスリリングな世界観で繰り広げられる、家族の絆の物語。

とにかくまぁ、子象のダンボのかわいいこと!フルCGとはいえ、細部まで実写で再現されるリアルな質感は見事で、まるでそこに生きて動いているかのよう。
戦後のレトロな雰囲気も相まって、サーカス団やジャグリングなど、子ども時代に観た昔のきらびやかなショーを思い出して、しばし郷愁に浸る自分。

アニメ版を踏襲したオマージュもそこかしこに忍ばせ、原作へのリスペクトも感じさせつつ、あくまでティム・バートンのイメージで描く「ダンボ」は、好みが分かれる作品かも知れない。

たとえば、お母さん象の子を思う心情を歌った「ベイビー・マイン」が流れる名シーン。本来なら情感たっぷりに感動を誘うところだけど、前後の脈絡が薄くやや唐突で、取ってつけた印象になってしまっていたように思う。
本作最大の泣きポイントになるはずのお母さん象との別れや再会シーンにしても、脚本の関係上、さらっとした演出でしか観せてもらえず、モヤモヤが募るばかり。

そして最も大きな違いは、子ども向けのファンタジーであるはずの原作が、なぜかダンボを取り巻く人物たちの悲哀や欲望、喪失と再生の人間ドラマが主軸になっていた点だ。
もちろん、それはそれで悪くはないのだけど、アニメ版を拡張した展開がこれでは、子どもの観客は置いてきぼりになりはしないか。

ファンタジーというには、あまりに現実的な描写が多くて、ちょっとした冒険スリラーになってしまっていたのが気になった。
売れっ子監督の個性と受けとめ、独立した作品と思えばいいのかも知れないけど、個人的には、もっとダンボや動物たちと家族との交流に的を絞って、ハートウォーミングに描いてほしかったというのが本音。

とはいえ、映画としてのクオリティーや個々の役者の表現力は申し分なく、コリン・ファレルの落ちぶれた父親や、賢くけなげな子役たちに共感するし、マイケル・キートンの強欲な支配人に、エヴァ・グリーンの妖艶な空中ブランコ、コミカルなサーカス団長と団員たちが織り成すドタバタ劇は笑いを誘う。

様々な欠点やコンプレックスを自信に変え、勇気を持って前へ踏み出すことへの希望を描くポジティブなメッセージ。
動物愛護や障害者差別、行き過ぎたビジネス志向など、問題意識を取り込みながら悪役がしっかり報いを受けるのも、ディズニーならではのお約束。

「メリー・ポピンズ リターンズ」が傑作だっただけに、少し期待し過ぎたかも知れない。
監督の解釈では、幻覚でピンクの象を夢見て酔いしれたり、自由に空へ舞い上がりたいと願う大人たちの潜在意識が具現化したものが、ダンボなのかも知れない。(んなわけないだろ!)


思わぬ形で現実の厳しさと優しさ(?)を観せられた娘の感想は「少し怖かったけど、ダンボかわいかった。」
満足ですか、ティム・バートン監督!
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