風来坊

バース・オブ・ザ・ドラゴンの風来坊のレビュー・感想・評価

3.5
ブルース・リーの映画はほとんど観ましたが、それほどファンでもなく詳しくもないので「へぇ~こんなエピソードがあったのか」と驚きました。
きっとファンの方には驚きもない知っていて当然のエピソードなのだろう。

言われているようにブルース・リーが高慢で野心と欲望に溢れ、カンフーや強さを自分がのし上がる為の道具としてしか見ていないような人物に描かれています。これは遺族などが怒るのも無理はないなと思います。自分に絶対的な自信があった人なのでそこを誤解されているんだろうけど、流石にこれは酷いなと思います。

対するウォン・ジャックマンは少林寺の教えに忠実で高潔なカンフーマスターとして描かれていてカッコいいが、脚本家と監督は多分リーよりウォンの方が好きなんだと思う。ウォンの方に寄りすぎていてフェアではないように感じます。中立に描いていたらもっと評価も高くなった気がします。

興味を持って少し調べましたが、この件は双方で言い分が違うようですね。
リーは「外国人にカンフーを教えてはいけない」というような事をウォンが言ったとしているが、ウォンには外国人の弟子がいたし他の一派も外国人にカンフーは教えていたそう。そもそも外国人に偏見があったらはるばるサンフランシスコまで来ないと思いますね。

どちらが決闘を言い出したかや他の件に関しても双方で見解異なっていますね。決闘に関しても立ち合い者は居ましたがなぜか出てこないし、リー婦人が本で詳しく書いているそうですが、そりゃ婦人だもの夫の評判を落とす事は書かないし完全に信じる事は出来ないと思う。リーさんに関しては身内からの評判が多いんですよね。

戦いの映像でもあれば白黒ついたんでしょうがありませんし…。
結局は当人のみぞ知るで良いような気がします。どちらもカンフーを愛していてどちらもスゴく強かったで良いと思う。伝説とはそういうものだから。
この映画だけでなくドキュメンタリーなんかでもあったけど、自分に絶対的な自信があるリーさんの常に上から目線の相手への距離の取り方は私は苦手…。

だいぶ話が逸れました…さて映画の方に話を戻しますが…。
2人の対決だけにスポットを当てるとすぐ終わってしまうので、リーの門弟の恋話などで場繋ぎしていますが、なんか中途半端で2人の話しと釣り合いが取れてないので、そんなのいいからはよ2人の話をとなってしまう…。
そもそもこの青年も全てが他力本願のくせに偉そうでどうしようもない…。

それでも伝説の男2人の教えの間で揺れる青年の心情はなかなか面白いのでこちらをもっと掘り下げた方が良かった。
この映画は事実に着想を得たフィクションで、実際の2人の戦いのいきさつとは違うみたい。

フィクションとしても2人の戦うきっかけに裏社会が絡んで来るとか関係ないし強引過ぎ。場所も実際はリーの道場で立ち会い人も前述したように2人だけ。観客なんか居なかったそうで…。直線的なリーの動きと円を描くようなウォンの動き。戦いの内容も劇中みたいな派手なものではなく実戦的な感じだったそう。それだと映画的に盛り上がらないのは分かるけど…ちょっと盛り過ぎですかね…。

ブルース・リーを演じたフィリップ・ンさんは仕草や話し方とかかなり研究して頑張っていますが、眼光に人を射抜くような鋭さがなくブルース・リーには見えない。ウォン・ジャックマンの若い頃の写真を見ましたが、こちらはもっと演じたジア・ユイさんは似てないような…。ただ威厳とかそんな感じは伝わって来ます。

バトルシーンはスピードがあって迫力があります。カンフー映画特有の味もちゃんとあって良いです。リーさんの血舐めとかちゃんとあって良かった。
2人の戦いよりクライマックスの戦いの方が個人的には楽しかった。

ブルース・リーさんがお好きな方や思い入れが強い方や詳しい方はこの映画は観てはいけないと思いますね。腹が立つ事は間違いない。私もこの映画のリーさんは大嫌い(笑)ウォンさんの方が好き(笑)
ただ…実際にこの戦いのあとにリーさんがちょっと変わったそうなので、この映画の言わんとしてる事は分かるような部分も…。

私は炎と氷のような全く考えが違う伝説の2人が拳を通じてわかり合う、フィクションと完全に割りきる事が出来れば楽しめるカンフー映画。
風来坊

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