鋼鉄隊長

Z Inc. ゼット・インクの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

Z Inc. ゼット・インク(2017年製作の映画)
4.5
シネ・リーブル梅田にて鑑賞。
「未体験ゾーンの映画たち2018」上映作品。

【あらすじ】
人々の理性を壊す未知のウイルスが全世界で発生。一方その頃、弁護士のデレクは上司のミスを擦り付けられてクビになってしまう。そこにウイルスが発生しビルが封鎖され…。

 極悪社長が社長室で幹部役員らを前にゴルフクラブを振り回して怒鳴るのは、『アンタッチャブル』でロバート・デ・ニーロ演じるアルカポネが行った撲殺シーンのオマージュか。となると最後の展開もまた……。

 という考察は無駄である。

 ひたすらに繰り返される暴言と暴力の応酬。その破壊によって生み出された爽快感をあるがままに受け入れるのが、この作品の醍醐味であろう。物語の導入など、あって無いようなもの。「未知のウイルス」も単なる起爆剤に過ぎない。とにもかくにも、「ムカつく奴をぶっ潰す」ことに終始しているのが、清々しくて大変面白い。
 そしてこの作品は丁寧な編集と脚本の上に成り立っている。序盤はテンポの良いカット割りで舞台の説明をし、そこから上司の悪態を見せ続けストレスを与える。イライラが頂点に達したところで、ウイルスの登場により理性が崩壊。怒涛の復讐劇が幕を開ける。これだけの展開をたった88分で表現しきっているのが凄い。「秒でアガる」とは正にこの作品にこそ相応しい。また暴力や性表現は、ぼかしすぎず過激すぎない良い塩梅となっており後腐れがない。暴力表現がやや物足りないと思われる人もいるだろうが、グロテスクなのが苦手な人も楽しめるレベルなので丁度良いと思う。
 唯一文句をつけるなら邦題だろう。この作品の原題は『mayhem』。つまり『騒乱』。ストレートで良い題名だと思う。ならば邦題はもっと弾けた感じに、例えば『血まみれ下剋上カンパニー』とかでも良かったのではないか。こういう作品はふざけた者勝ちだ。もっと盛り上げて宣伝しなくてはならない。
鋼鉄隊長

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