TAK44マグナム

Z Inc. ゼット・インクのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

Z Inc. ゼット・インク(2017年製作の映画)
3.6
これが本当の「いま、殺りにいきます」だ!


ID7なる、今にもでっかい円盤で地球に宇宙人が攻めてきそうな名称のウィルスによって、人の理性のタガが外れ、本能のままに凶暴化するアクションスリラー。
「ZInc.」という邦題からだとゾンビものかと思われるかもしれませんがゾンビは出てきません。
ましてや、水木一郎が「ゼーーーット!!」などと熱唱したりもしません。
たぶん、「28日後・・・」や「クレイジーズ」みたいな広義な意味でのゾンビものと捉えて欲しいのと、Z級にブラックな会社が舞台なので、それに掛けてるのかもしれませんね。
原題は「MAYHEM」。
破壊行為や混乱という意味ですが、たしかにそういった事が起きすぎるぐらい起きる内容に間違いありません。

主演は、ゾンビドラマの「ウォーキングデッド」のグレン役でブレイクしたスティーヴン・ユァン。
「ウォーキングデッド」では目ん玉が飛び出るぐらい殴打されて死んでましたが、本作では片目を充血させて元気いっぱいに人を殺しまくりますよ。
彼の相棒役に「ザ・ベビーシッター」のサマラ・ウェイビング。
顔が派手な女優さんなのであまり好きではなかったのですが、本作では髪型が好みというのもあってたいへん魅力的でした。
しかも、ネイルガンで邪魔するヤツには容赦なく釘を撃ち込む格好良さ!
これは惚れてしまうやろ😍


タワービルを占めるほど巨大な法律事務所。
希望を抱いて入社したデレク・チョーは、チャンスにも恵まれ順調に出世コースをあゆんでいた。
しかし、上司に濡れ衣をきせられクビを宣告されてしまう。
荷物をまとめてビルから出ようとすると、なにやら外の様子が騒がしい。
ビルの中でID7ウィルスが拡散したらしく、ウィルスの効力がきれる8時間後までビルの完全封鎖が決定された。
ウィルスに侵され、本能が剥き出しとなったデレクは、「ID7の効力が持続中の場合の犯罪行為は心神喪失とみなし無罪」という免罪符を武器に、自分を陥れた上層部の連中に復讐を決意、同じ思いを抱くメラニーを仲間にしてタワービルの最上階を目指すのであった。


・・・要するに、「イコライザー」のマッコールみたいにレンチやハンマー、ネイルガンで武装したキチガイ二人組が、クソな上司やCEOをブチ殺してやんぜ!と奮闘する映画です。
舐めてた社員が殺人マシーンになっちゃった、ヤッホーイ!

これを書いている当人も、仕事したのに代金を踏み倒す輩がいたりするので、仕事をしていれば・・・いや、ただ生活しているだけでも、誰にでも一人や二人は殺してやりたい相手がいるものでしょう。
なので、憎き相手を合法的にブチ殺せるなんて、とても共感を呼びそうな設定だと思いますねえ!
(↑完全にヤバイ人)

同じような雰囲気の映画に、ジェームズ・ガン脚本の「サラリーマンバトルロワイアル」がありますけれど、あちらは「殺しあわないようには出来ないのか」と葛藤することに重きを置いていましたが、本作では最初から病気で正気を失っているので葛藤なんぞいたしません。最初からガンガンに殺る気でみなぎっております!
とにかく嫌なヤツは殺しとけ、なのであります!
もちろん、悪のCEOもコカイン吸いつつ黙って座して待っているだけではなく、悪の戦闘員や、金やポストで釣った社員たちを使ってデレクたちを迎撃しますよ!

面白いのは、ウィルスのせいだから心神喪失で無罪になれるという無敵設定でも、ウィルスの効果時間に限度があるので8時間の封鎖が解かれるまでがタイムリミットだという事ですね。
もう、いっそのことタイトルを「8時間」にしちゃっても良いんじゃないですか、これ(苦笑)

最上階に行くにはエレベーターを使う他ないのですが、エレベーターを動かす為にはキーカードとパスコードが必要。
それを持つのが上司たちってわけで、まずは悪の上司や人事部長からキーカードを奪いにゆきます。
なんだかロールプレイングゲームみたいですね。
悪の戦闘員を倒して経験値をためつつ、実力行使や交渉術を使い分け、上ヘ上へと向かうデレク達。
惜しむらくは、CEOがデレクの首に賞金をかけたのに、45万ドル目当てで襲ってくる社員が出てこないんですよね。
それとも上司の取り巻き連中がそうだったのかな?
賞金の話はしてなかったけれど。
折角の賞金首設定、面白いと思っただけに活かせておらず残念でした。
モブキャラたちは、デレクたちに構わず殺しあったり、セックスしていたりする「背景」でしかなかったです。

まぁ、そこそこのゴア描写もあって、限定空間のパンデミックものとしては良く出来ている方ではないでしょうか?
「生き残る」が目的ではなくて、「ブッ殺す」が目的ってのは目新しいかもしれません。
オチが少々甘めなので、もう少しエッジを効かせた辛口な締め方だったなら、もっと印象深さが増したのではないかと。


何でしょうね。
間違ってもブラック会社で社畜になってはいけないという警鐘を鳴らすこの映画の作り手たちの「それに比べて撮りたい映画を撮っている俺たちはハッピーだよなぁ!」というリア充ぶりアピールなのかも?なんて思ったり(汗)
メッチャ愉快痛快!までとはいかなくとも普通には面白いので、本能が促すようなら観るも良し、ですよ〜。


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