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ブリグズビー・ベアのしののレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
3.9
虚構とは、辛い現実に立ち向かわせてくれるものである。描いているものは『レディ・プレイヤー1』と同じだが、こちらはよりミニマムで、より私的な体験をくすぐってくる。物語がどのように生み出され、どう影響し、そこで何を得るのか。それは人と人が繋がる過程でもある。

主人公が無茶苦茶やって、それがお咎めなしだったりすぐ解決したりするので、甘いなーという印象は拭えない。ただ、「虚構は逃避ではないか?」としっかり問題提起してくれるキャラクターがいて、その思いがリアルに描かれているのは好印象だった。歩み寄りの過程に重みが増す。

これ割とオトナな話だと思う。虚構を無条件に受け入れているのではなく、むしろそれを単なる逃避先にしないために何が必要かをしっかり提示しているからだ。自分の「好き」をちゃんと伝え、貫き、周りはそれを否定せず歩み寄る。世界に適応していく過程としての映画作り。

そんなオトナな話なのに、随所に前述したような甘さがあるというアンバランスさは気になった。あと、映画の内容や評判よりも、それを作り終えたということが重要であるとしているので、主人公の書いた物語が彼にとってどのように作用したのかという部分がやや曖昧。

それでもラストの一瞬にはやられた。人生は、「新たな冒険への旅」の連続だ。その度に我々は物語を求め、本気でそれを愛し、そして救われていくのだ。


本作のプロットについて唸ったこと(※リンク先ネタバレ有)
https://fse.tw/OM4j0#all
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