るるびっち

ブリグズビー・ベアのるるびっちのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.3
超個人的な話ほど普遍性を持つ。
監禁されて育ちTVでは「ブリグズビー・ベア」しか知らないという、とても特殊なキャラでかなり捻った設定なのだが、彼の孤独に皆が共感する。
SNSなど他人との繋がりが簡単になった時代に、逆に繋がりの難しさを感じるからなのだろうか。

かなりのキモオタで同情はしても共感困難なハズだが、ブリべアのキャラがカワイイせいか観客も理解的。
もっとも状況を宣伝やSNSで既知しているせいか、客席は最初から温かい笑いに包まれている。
『万引き家族』に一部、犯罪家族を正当化するなという批判的な声がある中、こちらも誘拐というヤバイ設定なのにあまり批判的な声を聴かない。
観客の持つ優しさと厳しさは不思議なものだ。

特殊な環境で育ったため偏った価値観を持つ主人公と、一般的な生活を送る人々との間の会話や価値のズレで笑いを生んでいる。同時に異端である彼に共感するのは映画冒頭から彼の特殊な生活を見ていることと、観客自身も自分と他人を理解する困難さを感じているからだろう。

彼の無垢さが通じて、まずは若者(偏見が少ないのが若者の素晴らしさ)から彼を理解していく。社会的偏見の象徴である警察側の人間が早い段階で彼に感化される。展開的には壁になるべき存在なのに最初の刑事がすぐ彼の魅力に飲み込まれるから、第二の刑事が立ち塞がるかと思いきや・・・
この辺は脚本の甘さなのだが、逆に彼らの優しさに涙する。

実はダークサイドに落ちたマーク・ハミル演じる誘拐犯が中盤全く出てこないが、彼の愛情深さはブリグズビー・ベア自体に込められているから、観客は彼を具体的に見なくてもその優しさを知っている。
誘拐した子供の為に、幾ら変態でもあれ程の数のビデオは作れない!!
ものすごい愛情だ。但し間違った方向だが。
その辺を厳しく問う姿勢はないが、そもそも作り手はコメディの人で、この捩じれた設定はコント的な作りなのだ。しかしその中に「もの悲しさ」が漂ている。不思議な話だが共感する。やはり超個人的な話ほど普遍性を持つということなのだろう。
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