ひば

ブリグズビー・ベアのひばのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.3
25年間世界から隔離され育った彼の心には空想のクマが住み着いていた。誘拐を一切肯定しない姿勢が良い。誘拐犯とその産物を同じ目で見るのは少々勿体ない。そこに幸福が詰まっているなら忘却は空虚で暴挙な選択。私の身体の一部をもぎ取ろうとなんてしないで。私を縁取るのは私、舵をとるのも私。当然のことなのにこんなに胸に響くのは、私の人生は他者のコントロール下にあるとどこかで思っていたからだろう。うるせえ黙ってろ!私は全部私のものだ!とひっぱたかれ愛溢れるハグをしてくれた映画でした。
クマが生命維持装置となる。人生を狂わされる。オタク、悲観しながらすぐこういうこと言う。でも心底喜びながら言ってるの知ってるよ、だって私の心にもずっと住み続け側にいてくれた存在が確かにあった。片腕ずつ一緒にハンドルを握って走ってきた。いつかそのクマがいなくなっても、走ってきた道は確かに存在する。現実を見ろだなんて言わないで、そこに現実が、人生があるんだよ。永遠に。
人の心をわしづかむという稀な才能を誘拐という形で台無しにする、この事実が最後まで付きまとい続けるので、ポップとシリアスなバランスが絶妙。削り取ることができないものは全部受け入れることで進めることもあるよ。常識というのは実は常に変化し続けるものなのかも。
私の一部となって生きている何かを責めることは誰にもできない、私が私でいることを誰にも止められない、止まる必要もないんだという肯定、優しい話だった。誰かを知るにはその誰かの好きなものを知るとその人が見えてくる。そうして広がる正のサイクルはどんな道具や時代であっても陰ることはない。

May our minds be stronger tomorrow.
ふふ、この言葉は貴方が言うからこそ真実味が増すね~~~
そして家帰ってから『僕とアールと彼女のさよなら』をポチりました。関係ない?あるよ!笑
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