ま2だ

ブリグズビー・ベアのま2だのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.6
ブリグズビー・ベア、ひと月前に観賞。

どのような形であれ、ものを作るという行為が作る者の心を癒やすということと、そうして作られた物語がまた、多くの人間を癒やしてゆく過程が、緩いムードに見えてきっちりメタな構造で描かれている。コンパクトな傑作だ。

誘拐犯の父が作るブリグズビー・ベアの毎回のエピソードに強引にくっつけられた、子の成長を真摯に願う注意事項の数々には、「万引き家族」でリリー・フランキーが時折披露する人生のTIPSに込めた、名状しがたい親なるものとしての感情がよりストレートに表現されているし、この物語そのものを「万引き家族」の後日談的に読むことも可能だろう。

また社会に復帰した主人公を取り巻く人々との関係性は、タッチのヘビーさの違いはあれど「ルーム」と重なる部分も多い。周囲の人々の好奇の視線や戸惑いなどはいずれにもきっちり織り込まれている。

個人的にはいたいけな子役に苦難とそれを乗り越える感動を託すのではなく、むさ苦しいニートを主役に据えつつ上掲作品と同じ表現に挑み、成功してみせた姿勢もおおいに買いたいところだ。

本作が映画として優れているのは、犯罪被害者が社会の中で快復していく過程に、自主映画制作のプロセスを採用することで、映像作品として表現上のアドバンテージやメタ構造を最大限に獲得している点にもあるだろう。

その意味で現在話題沸騰中の「カメラを止めるな!」やスピルバーグの「レディー・プレイヤー1」と並べたくもなる作品だ。

「ワンダー」のSWオマージュシーンにはあまり感心しなかったのだが、本作ラストのベアにはしっかりと涙をひとしずく搾り取られた。登場シーンは決して多くはないが、マーク・ハミルも最高。出てくる人みんないい人映画に新たな傑作の誕生だ。
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