しゅう

ブリグズビー・ベアのしゅうのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.0
字幕版を鑑賞。

「誘拐された子供が偽の親に育てられる」という点では『八日目の蝉』を、「閉鎖空間で育てらてた人間が世界と遭遇する」という点では『ルーム』を連想したこの映画。特に「誘拐されていた期間の人生も肯定する」という点で『八日目の蝉』との類似点が大きいと感じた。

誘拐という行為のおぞましさとは別に、そこでの生活とその中で得られた自分のアイデンティティを単なる誤りとして否定される事は非常に辛い。

終盤の試写会の裏でジェームズが慄いているのは、単にクリエイターとしてのプレッシャーでは無く、あの映画が彼の数十年の人生そのものだからで、そして観客の喝采でそれを肯定された事によって、初めて過去と訣別出来るようになる。

何より、劇中のビデオ『ブリグズビー・ベア』が本当に面白そうで、それによってこの作品がジェームズのアイデンティティの核になる事に圧倒的な説得力が産まれている。
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