えむえすぷらす

ブリグズビー・ベアのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
5.0
冒頭の奇っ怪な状況はすぐ解き明かされていく。そして異文明の惑星にいきなり降り立ったかのようなギャップに驚くジェイムズは徐々に状況を理解してそしてスペンサーとの出会いから己が求めるもの、そして彼自身が持つある才能を元に走り始める。

マーク・ハミルはSWのルーク役であった事は俳優キャリアとしてプラスなだけだったと思えないのですが、こういう役を引き受けて演じてみせる所はやはり優れた俳優なのだと確信させられる。
彼の演じた役は大変奇抜なものですが、作中の彼ならきっと700話以上もの製作を本当にやってのけたと信じさせてくれるリアリティがあった。
彼がいなくても出来る映画ですが、彼じゃないとこのリアリティはなかった。

作中の映画製作劇は「聲の形」原作でもあった。作り手の意思がないと途中で挫折するし、原作では最大の危機が映画制作中に引き起こされ、そして再度前に進むための引き金にもなった。
本作だと主人公が社会を理解していく手段であり、単なる被害者で終わるつもりはないんだという証明になっている。

彼は人を巻き込むのが上手い。ブリグスリーベアは彼が魅力を語る事で人が説得されていく。刑事に対するトーク。諦めない気持ちと「いつまで砂糖水を売ってるつもりなのだ?」という某林檎経営者ばりの話法。これが彼を前へ、前へと突き動かしていく。

最後、偽父のマーク・ハミルに面会して話をした時。偽父でありジェイムズ専用ビデオドラマシリーズ制作者だった彼は自分が偽父である事を確認してその上でなお「息子」はある事では彼を認めている事を示し、多分それを贖罪とする事を赦している。実父の人、よくぞ連れて行ったなあと思うし、それに応えるマーク・ハミルの演技も素晴らしかった。

スペンサーが最後に主人公に言う映画を完成させた事の意義。それが大事なエッセンスなんだと思う。

追記。スペンサーってスタトレファンであり、それ故にジェイムズを最初に理解している。制作陣の名前を考えると色々と深読みも出来そう。

追記2。脚本を届ける事がもはや冒険になる「500ページの夢の束」と異世界への挑戦という所で共通項があると思う。こちらもお勧めです。