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ブリグズビー・ベアのmoのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
3.9

『悲しいですね、大切なことをやらないなんて。』


生まれてから25年間、両親とシェルターで暮らし一度も外に出たことがないジェームズ。
彼は幼い頃から毎週家に届けられる教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」だけを観て過ごしていた。

そんなある日、両親が逮捕されたことで彼の生活は一変。
両親だと思っていた人達は誘拐犯で、自分こそが25年前に彼等に誘拐された子供だという。
初めて外の世界へ飛び出し、本物の家族に出会った彼は予想外の行動で周囲を騒動に巻き込んでいく。



"好き"って気持ちだけで自分の未来を選べなくなったのはいつからか。
夢を追いかけるには人並み以上の努力や情熱が必要で、時にはそれらを以ってしても越えられない壁もある。
そんなとき、隣に用意されている楽で生きやすい道に惹かれることだってあるだろう。

私達はそんな夢と現実の取捨選択をあらゆる場面で強いられてきた。
そして自分でも気付かぬうちに、「捨てる」ことに慣れてしまったのかもしれない。


ところがこの物語のジェームズには、何においても「捨てる」という選択肢がない。
それは彼が25年間、捨てるという選択肢を持つ機会がなかった無知故の無邪気さからかもしれないが、結果的に彼の100%の意思を持った行動は周囲を動かし成功へ導いていく。


捨てることが悪いこととは言わない、その選択も勇気がいる尊い決断だと思うから。
だけど経験は、時に重い足枷となって大事な心の叫びを塞いでしまう。
この作品はそんな心の叫びに耳を傾けるための、ほんの少しの勇気をくれた。


もし、今なにかに悩んでいたり、選択を迫られている人がいたら、是非オススメしたい。
きっと自分にとって一番大切なもの、それを捨てずに進める道が、ぼんやりと見えてくるはずだから。
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