Shelby

ブリグズビー・ベアのShelbyのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
3.8
両親と暮らすジェームズ。週に一度観られる大好きなブリグズビー・ベアを楽しみに生きていた。昼間は手伝い、勉強。夜は両親と夕食。
唯一、普通と違うのは外に出ることが許されていないということ。両親以外の人間と会ったこともない。そんな日々を当たり前として過ごしていたジェームズはある日警察に保護される。
両親と思っていた2人は誘拐犯だった。本当の生みの親、そして妹と再会し、一緒に暮らし始めるが、外に出て知る衝撃の事実。
ブリグズビーベアという番組は存在しない。
父親がジェームズのために毎週制作していたのだ。ブリグズビーベアの続きを作りたい、その一心で友達、家族と共に映画を作り始める。

誘拐、監禁で言えばお馴染みの映画ルームを思い出す。ルームでは、監禁後の被害者側の苦しみだったり新しい環境への適合がメイン。
今作ではあっさり新しい世界へ馴染めちゃってて、割とジェームズもコミュ力高め。
監禁されていた意識が低すぎてコメディタッチに描かれていたのが逆に笑えてくる。

「受容」映画を見ている最中、この一言が思い浮かんだ。この映画のテーマでもあると捉えられる。とにかく映画に出てくる人々が優しい。
誘拐犯だった両親。罪を犯したことに間違いはないが、確かにジェームズのことを愛していた。
そして生みの親である本当の両親達。
戸惑いながらも彼のありのままを受け入れるように歩み寄る努力を怠らない。
そして妹のオーブリーも最初のうちは反撥していたが、兄を受け入れ始める。他にも友達のスペンサーや警官のヴォーゲルなど。
世の中を知らず、ブリグズビーベアにしか関心を示さない青年とそう易々と仲良くなれるだろうか。自分とは違う異質な存在を遠ざけようとしないだろうか。彼自身の本質を見ようとする周囲の温かさが堪らず目頭を熱くさせた。

確かに虚構で固められた世界だった。
しかしその世界が彼の全てであり、救いであったのも事実。信じれば、その世界はこんなにも美しくて優しい本物になりうる。
思ったよりもコメディ色が強く、ハートウォーミングなストーリー。この世界観は是非見て欲しい。
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