KHinoji

ブリグズビー・ベアのKHinojiのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.1
子供向け映画と勘違いして(笑) パスしていましたが、ここFilmarksの評価を見てこれは見なければ!と思い、遅ればせながらレンタルDVDにて見ました。
見た結果は、いろいろな意味でたいへん面白かったです。

ジャンル的にはかなり特殊な設定の青春コメディ映画なわけですが、主人公が、新しく知り合いになった友人達と映画作りにはまっていく(自分のアイデンティティを維持するためにそうするしかない)様子が、映画ファンにはたまらないでしょう。
たしかに「カメ止め」に似た雰囲気の映画と言えましょう。

「ブリグズビー・ベア」とは子供教育のための架空のTV番組で、もちろん熊の着ぐるみのブリグズビー・ベアが主人公の長寿番組です。

実際には、主人公を誘拐した偽の父親が、その子を自由に外で遊ばせるわけにはいかないので、家の中での娯楽を与えるために自分で作った偽のTV番組です。子供の情操教育も兼ねられています。しかも主人公が子供の頃から、25年間にわたって延々と作り続けられているのです。
(誘拐犯になってしまった両親でなありますが、その子供に愛情をもって育ててきたというわけです)

しかし偽の両親は逮捕され、新作のブリグズビー・ベアを見ることが出来なくなってしまいます。
新作を見るために、自ら映画「ブリグズビー・ベア」を撮ろうとする主人公と、憎い誘拐犯が作っていたそんな番組にかかわることを快く思っていない本当の両親との親子の葛藤が始まります。ブリグズビー・ベアとの25年間を無しにはできない主人公と、誘拐事件を無かったことにして白紙の状態からやり直したい本当の両親との思いの行き違い。
そして、ラストはもちろんーーー

人間は色々なものに洗脳されて生きていくものだと、私は思っています。洗脳、と言うと極端な言い方になりますが、人間のコミュニケーションというのは本質は洗脳と同じなのだと思っています。
この映画の主人公は、偽の両親が与えたブリグズビー・ベアという物語に洗脳されて育ってしまったわけです。

しかしながら、洗脳された結果、その人間がどうなっていくのかはまた別の問題です。他人から良い人と言われるような人間に育っていくこともあれば、洗脳に耐え切れず崩壊していく場合もある。
誘拐犯とは言え人格的には良い人間だった偽の両親に育てられた主人公は、やはり優しく良い青年に育っています。
結果、この映画は誘拐されたという一見不幸な状況にもめげることなく、多少の暴走も含めて、素人映画作りに奔走する愛すべき人間たちの青春コメディになっているわけです。

映画はフィクションなわけですから、全ての映画は「ブリグズビー・ベア」のようなものです。そんな映画に良いとか悪いだとか感想を持ってしまう(映画に洗脳されることを受け入れている)私達は、この映画の主人公とある意味同じなんだと思います。

映画ファンの方は、見る価値がある一作だと思います。


(2018/11 残念ながらレンタルDVDにて、字幕版)
 ps. レンタルDVD版にも多少のメイキング等入っていますので、そこはお徳かも。
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