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ブリグズビー・ベアのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.9
立川シネマシティで2週間だけ復活上映してたので観てきました。
公開時に劇場で観られなくて後悔していた作品だけどまさかこんな機会に恵まれるなんて。

周囲のお客さんといっしょに笑い、涙を浮かべながら幸せな時間を過ごせた。シネマシティさん本当にありがとう。

【1】激ヤバの傑作だ!
公開館も少なかった小さな作品だけれど、レトロでチープな映像とは裏腹に大きな大きな愛情と幸せがこぼれる傑作。こんなにもあたたかく幸せな映画にはなかなか出会えない。
すべてのスターウォーズファン/映画ファン/なにかの創作をしたいと思ったことがある人たちに観てほしい作品です。

主人公のジェームスは劇中の教育番組『ブリグズビー・ベア』(ポンキッキやウゴウゴルーガ的な)と共に育った青年。スターウォーズが大好きな自分にとって、
「ブリグズビーの新作は?」
「ブリグズビーは僕の人生の全てだ」
「ブリグズビーのこと何も知らないくせに!」
など、ジェームスの口から次々こぼれるブリグズビー愛あふれるセリフに思わず胸が熱くなります。

映画/音楽/アニメ/漫画などで長年愛しているシリーズがある人は誰もがジェームスに共感できるはず。


<以下、ネタバレあり感想>

本作を観たことがない人は、ぜひ白紙で観てほしいので、以下は観賞してから読んでいただけると幸いです。





【2】ブリグズビー=スターウォーズ
テッド役にルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミル氏を起用したことが象徴的ですが、本作は至るところにSWを意識した単語や演出が散りばめられています。

光る杖で格闘/勇まし族とかいうジェダイもどき/ダースモールかのような赤くてアクロバティックな悪役/ラストではハイパースペース突入まで登場。
「銀河」「希望」という単語の連発にもニヤニヤしてしまう。

「ブリグズビーは絶対にあきらめない」とすねるジェームスを見て、
「ルークはそんなことしない」とEP8を嘆くSWファンを思い浮かべてしまった。

また、『ブリグズビーの冒険ザムービー』のストーリーに自身の体験を反映させるジェームス、そしていよいよ公開の際に「駄作だと言われたら?」と緊張しトイレにこもってしまうジェームス。

どちらもスターウォーズ第1作を作った際のジョージルーカスを連想させられるので、ルーカスを愛するSWファンは皆、ジェームスに対して特別な感情を抱いてしまうこと間違いなし。
(ビジュアルは完全にスピルバーグだけれども)

偉大なルーカスの姿が重なることで、自然とジェームスに対して敬意のような感情をおぼえてしまった。映画を完成させたジェームスの姿に感動したことで、自分にとってジョージ・ルーカスって本当に特別な存在なんだって再認識させられた。


【3】キャラクター
◼︎ジェームス
ぱっと見オタクっぽい青年だけれど、全編通して観ると本当にカッコイイ男だなと感じる。
25年間触れていなかったこの世界のことをきちんと理解して適応できる頭の良さ。
不慣れなだけで、最終的には誰ともコミュニケーションをとり信頼し合える人間性。
思い立ったことを実行に移せる行動力。

そして、こんな素晴らしい人間に彼を育てたのはテッド夫妻とブリグズビーベアなんだという事実。

彼らのやったことは許されないけれど、ジェームスを立派な男に育てたあげたのは、テッド夫妻の愛情と、ブリグズビーの教育ビデオだったのだなと。


◼︎テッド(偽父)
出番は少ないけれど、マークハミルをキャスティングできなければこの映画はここまで感動的な作品にならなかった。
・歪んでいるけれど彼なりの愛情をもっていることが伝わる俳優
・常識の通じない変人であることを感じさせる俳優
・1人でブリグズビーベアを700本以上製作するという異常性に説得力のある俳優
・ブリグズビーとサンスナッチャーの2役をこなせる声優
・SW、ジョージルーカスをイメージした物語にふさわしい人物
すべてを兼ね備えたキャストはマーク・ハミル以外に考えられない。

◼︎グレッグ(父)
個人的には助演男優賞をあげたい。最高。
「私たちの25年は?ハーン?」って激昂してしまうの、ジェームスに言っても仕方ないけど痛いほどわかる。
「私たちはありのままのお前を愛している。ブリグズビーもその一部だ」は至高。

◼︎ルイーズ(母)
ジェームスに悲しいことや嬉しいことが起こるたびに顔をくしゃくしゃにして感情をたかぶらせるお母さんの表情最高。ジェームスへの愛を感じた。

◼︎オーブリー(妹)
キャスティングが抜群だと思った。
黙っているだけで無愛想な雰囲気を醸し出せるこの女優さんは素晴らしい。
思春期の女の子に突如オタクっぽい青年が兄として出現したらうまく距離感がとれないのは当たり前。そんな自然な反応を表情だけで出せるので存在感抜群。

だからこそ、キャンプでの和解や、終盤で彼女が両親に映像を見せに行ってくれたシーンでものすごく感動する。

◼︎メレディス
なんかエロいし愛嬌がある。それでいてさっぱりしていて爽やか。
これまた役にハマった女優を連れてきたなあという印象。
ジェームスにとって、オーブリーは妹だから性的な対象になってはならず、逆にメレディスは彼が人生で初めて近くで接した異性だから、彼にとっては性的魅力が強く感じられるはず。
この特質を雰囲気だけで印象付けられる2人の配役はよかったと思う。

◼︎ヴォーゲル刑事
勇まし族=ベンケノービ 笑
存在感あるいい俳優さんだと思った。

◼︎スペンス
好感度120%のオタク。
ジェームスと2人で「激ヤバだ!」とテンションガチ上がりする数々のシーンは、ちょっとしたオタク趣味を持つ人なら誰もが「これこれ!最高だよなああ」って感じるはず。
SW好きの友人と新作公開直後に盛り上がるときの空気と完全一致。

◼︎ホイットニー(スマイルシスターズ)
ジェームスの25年の人生で、彼女が唯一のアイドルでありオカズであった。
これまたルックス的にB級感ある絶妙な女優さんをキャストしたなあという印象。

ジェームスにとっての彼女はアラサーぐらいのスターウォーズファンにとってのナタリーポートマンのようなものだよなと感じてしまった。
パドメがカフェでウェイトレスしてたら同じリアクションしてしまうわ。

◼︎サンスナッチャー(太陽泥棒)
キャラ立ちがスゴい。マークハミルは声優として(ジョーカーなど)けっこう人気っていうのは知識としては知っていたけど、本当にすごいなって思った。


【4】好きなシーン
◼︎『それは我が銀河系の苦難の時代...』
マイクを向けられた直後のシーンは今年度全映画の全シーンの中で最高のシーン。
全身に鳥肌がたって思わず「うわあっ」って声にならない声をあげてしまった。

今も昔もブリグズビーはジェームスの人生の全てだが、ブリグズビーはテッドのものではなくジェームスのものとなった。

もはやテッドがブリグズビーの新作を生み出すことはなく、
ブリグズビーはジェームスが、彼の信頼できる家族/仲間とともに手がける作品となったのだ。

そのことを悟ったテッドは、製作者としてではなく、演者としてジェームスに応える。

歪んだ愛情ではあったが、自分がブリグズビービデオで育てたジェームスがいつのまにか一人前の大人/偉大なクリエイターへと成長した姿を見て、今自分にできる役割を全力で全うすることで応えるテッド。
震えるほどの名シーン。

◼︎待っている父
テッドのところへ向かうジェームスを施設前まで車で送り「お前が必要とするならここで待ってる」とだけ伝えるのクール。

ここに至って、父子の間にはもう固い絆が生まれていることを感じた。
だからこそ家族をみつけたジェームスはテッドに対して、ただ声だけを求めることができたのだ。

◼︎プロップにテンションガチ上げ
刑事がお助けクリスタルやブリグズビー頭部、チンプン族のプロップを持ってきたときのジェームスのリアクション最高すぎる。

自分が突如異世界に連れていかれて、ライトセーバーやベイダーのヘルメット、ジャワ族の衣装などの本物のプロップを持ってこられたら完全一致なリアクションする自信ある。

◼︎ジェームスを讃える父
ブリグズビームービー上映終了後、ジェームスを見つけて全力で拍手するパパがもう最高すぎてなんか無限に涙があふれる。パパに全力で拍手を送りたいぞ。

【5】減点要素
減点要素はほぼ見当たらない傑作。
強いていうなら、以下3つくらい。

・テッド作のブリグズビービデオと、ジェームス作のブリグズビームービー本編をもう少し見せて欲しかった。
・刑事の2人目と施設で知り合ったマトリックスみたいなサングラス男の役割がよくわからなかった。
・全体として音楽がさほど印象的でなかった。ブリグズビーのオープニングテーマが最高すぎるのでもっともっと流して欲しかった。

【スコア】
★4.9!
97分は短すぎる。もっともっとジェームスを見ていたかった。
わずかな減点要素と、全体にこじんまりしているので0.1だけ下げました。
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