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ブリグズビー・ベアのtetsu0615のネタバレレビュー・内容・結末

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

スゴく良い映画だった。

誘拐事件の被害にあった青年を描くというヘビーな題材のはずなのに、ジェームスの明るく前に進もうとするキャラクター、何より好きな事へ対する情熱と行動力、想いが彼の周囲の世界を優しく変えていってくれるステキな物語だった。
そして、周囲の意見に流されず好きなことを貫き通すことや映画製作に励む彼らの姿に、忘れていた何かを思い出させてくれるようなポジティブなメッセージを届けてくれる。

ジェームスは教育番組「ブリグズビーベア」のオタク。毎日ビデオを見返しては研究をしている。両親からは外は危険と言われ外出は禁止されていた。そんなある日警察がやって来て両親は逮捕される。実はジェームスは昔誘拐されていて、彼が信じてきた両親や外の話はすべて嘘だったのだ。彼が大好きなブリグズビーベアすらも…

冒頭、ジェームスの日常が描かれる。ブリグズビーベアのビデオを見て、その感想をネットにアップし、両親と食事をして、決められた就寝時間、起床時間で1日を過ごしている。どうやら外には出られないらしい。地下での生活のようだ。
そんな毎日を続けていたある日、遠くに見える初めて見たサイレン。そして両親が逮捕され、彼は未知な世界である外へと連れ出される。
25年間、なぜ逮捕されず今見つかったのかなどというツッコミは(設定なのだから)野暮な話だろうが、偽の両親(特に父親)はスゴイ。ブリグズビーベアの全てを作り出したのは彼だったのだから。何故ここまでしたのがは謎のまま話は進んでいく。
教育番組風に作られていることから、偽の父親なりの愛情表現だったのであろう。
ジェームスは刑事から誘拐されていたこと、信じていた世界は嘘だったこと、ブリグズビーベアは偽の父親の創作物だったことを聞かされる。
割りとヘビーなお話なのだが重たくなることもなく、ジェームスも割かし今まで知らなかった世界へどんどん繰り出していく。特に映画を見てから、ブリグズビーベアが偽の父親が創り出したものであることを知ってからは、自分がブリグズビーベアを作ろうとやる気になる。
あと、偽の両親としか交流してこなかった割にはグングン話せてる笑
まあ、ネットでコミュニティをやっていた(偽の両親の作っていた偽物だが)おかげなのか。
もしくはブリグズビーベアのおかげなのかも。

何より、妹と行ったパーティーで出会ったスペンサーが良いやつだった。彼は映画オタクで自主映画を習おうとしており、ジェームスと意気投合する。
初めは物珍しさだったかもしれないが、ジェームスの熱意、好きなことを語るときの生き生きとした表情がきっとスペンサーにも響いたのだろう。
そんな彼とブリグズビーベアを製作しようとするジェームスに両親は少し困惑気味。それもそのはずであろう、ジェームスを監禁していた犯人が作ったものなのだから。
カウンセラーもどうにかしようとするものの、ジェームスはお構い無し。
ジェームスは映画製作を続ける。そんな彼の情熱は担当刑事を、彼の存在を疎ましく思っていた妹も、そして両親をも変えていく…
ジェームスが担当刑事さんに向けた好きなことを貫く姿勢が彼を職務を越えた行動に向けさせ、映画作りをイキイキと続ける兄の姿に妹も両親も彼の今のありのまま全てを受け入れていく…
ジェームス自身もその周りの人々もとても優しい世界で彩られていて安心して見ることが出来たのも良かった。

セリフの節々に、人生をポジティブにしてくれるメッセージがあったりして、それもじんわりと響く。そしてジェームスが大好きなブリグズビーベアを周りにどう思われようと貫こうとする姿、好きなことにかける熱意や想いが周囲の人間を優しくほんのりと変えていく姿が感動的な傑作!


ちなみにの追記
主演と脚本と監督の中学時代からの幼なじみだそう。
そんな彼らの友情やこの映画作りへの想いがジェームスとスペンサーの関係性などに含まれているのかも?
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