藍住

ヘヴィ・ドライヴの藍住のレビュー・感想・評価

ヘヴィ・ドライヴ(2018年製作の映画)
4.0
保護観察の元で職探しをしながらも短時間で大金を稼ぐためにドラッグの売人に戻ろうとする姉と、望まない妊娠から中絶を決意する妹。
やりたいことをやれない。
お金が無いから。
子供を産むことも中絶することも簡単には決められない。
お金が無いから。

アメリカでは一般企業に勤めて朝から晩まで労働したとしても保険に入れる保証はないし、それよりもドラッグを売って稼いだほうがずっと楽にお金が稼げるという現実。
ドラッグを売るだけで家を手放す必要もないし、子供を好きな学校に通わせてあげられる。
麻薬を根絶させたいはずなのに矛盾している。
つい先日、麻薬を根絶させるために奮闘する3人の女性のドキュメンタリー映画を観たけど、本当に麻薬を根絶させたいなら地域や組織、支援団体だけじゃなくて、国が取り組まないと本当の意味での根絶はできないんだと思った。
麻薬を売る人、買う人を生み出しているのは一体誰なのか。

貧困層の問題だけでなく、人種問題にも焦点を当てるし、展開的にはどんどん嫌な方向に転がって息が詰まるけど、ラストは凄く良かったな。
映画ではテッサ・トンプソンが姉でリリー・ジェームズが妹というキャスティングなんだけど2人とも本当に素晴らしかった。

それにしても、なんで映画のオーディエンススコアがこんなに評価低いのかわからない。
国がそうさせてくれないから仕方なくヤクの売人に戻って差し押さえられた家を取り戻そうと奮闘し、妊娠を中絶をする選択をする妹を支える姉という見事な女と女の物語。
アメリカの映画って自分が自分らしく生きたくて苦しいのに家族と気軽に縁切れない人達の物語が多くて、この映画でもその点については腑に落ちないけど、それを大きく越える「女の自由」を尊重したこの映画が私は好きだ。
『ROMA/ローマ』もそうだったけど、妊娠中絶を選ぶ権利を行使する女の物語が世の中にはもっと必要だと思う。

そしてこの映画の監督を務めたニア・ダコスタ監督がキャプテン・マーベル2を撮るなんて、信頼しかないな。
今から楽しみにしてる!!!!!
藍住

藍住