eye

赤色彗星倶楽部のeyeのレビュー・感想・評価

赤色彗星倶楽部(2017年製作の映画)
3.7
赤色彗星倶楽部(2017)

まさかまた劇場で観測できるなんて…
3年ぶりの赤色彗星到来。。。

『赤色彗星倶楽部』は当時ポレポレ東中野で1週間限定公開されていた

山戸 結希監督(ホットギミック/19・21世紀の女の子/18)が映画に寄せたコメントが

劇場公開回数とかけあわせて

「7回だけ赤色彗星がやってくる」

と表現されていたことを今でも覚えている

ポレポレで公開終了になったあと 同じように1週間限定でテアトル新宿の あのどデカいスクリーンにて公開されていた

今作は早稲田映画研究会(自主制作)による作品で撮影自体は2015年に行われていた

第11回 田辺・弁慶映画祭でグランプリを獲得し PFF2017でも入選してたり 数々の映画祭を渡り もはやインディー感をちょっと抜けたような

何ならホントの彗星のように

たまにしか出会えないレアな映画といえるのかもしれない

ちなみに

『また一緒に寝ようね / 15)』
『なっちゃんはまだ新宿 / 17)』

両作品で監督を務めた首藤凛 監督も「衣装」という形で『赤色彗星倶楽部』に参加している

『赤色彗星倶楽部』は

天文部メンバー内で盛り上がる60年に一度の赤色彗星の到来を前に同じ磁力を持つ彗星核を作ってタイムパラドックスを起こそうする青春SF群像劇

文化祭とも近い9月22日に到来する赤色彗星を前に彗星核を巨大化させるために部員は奮闘するわけだけど、、、

全体の雰囲気として

教室での他愛のないお喋りや授業中に似顔絵描いて生徒間で回したり

主人公ジュンとハナの幼なじみの恋模様とか天文部ジュン・カヨ・ヨシヤス・ハタケの4人の雰囲気とか

学生特有の器用さと不器用さのいなたい雰囲気があって

ダラダラした黄昏の放課後の感じも
瑞々しい記憶として綴じ込められている

>なにを忘れて大人になろうか

ジュンの幼なじみのハナが不慮の事故に遭い
居なくなり改めてジュンにとってハナはかけがえのない人であったことを認識する

恋愛モノにはありがちな設定ではあるけど
「赤色彗星」×「ハナ」の尊さが掛け合わされている

居なくなった彼女は巨大な彗星核を前に天文部メンバーの前に記念撮影の際に一瞬現れる

サブリミナル的なコマ挿入で
それがあのメインビジュアルの画

その後 赤色彗星がやってきてタイムパラドックスからのパラレルワールドが展開される

その世界ではジュンとハナが別の次元の中で会話するシーンが描かれる

喪失感の曲がり角も描かれ「寂しさ」と「儚さ」に加えた現実の先の忘却の世界において

ハナのセリフ

>(私を)忘れてもいいんだよ?

あれにはなんだかジュンと同じようにポッカリとした喪失感を追体験してしまう

>青春は、普遍的に平凡で、余韻だけが鮮やかだ

彗星の観測も重要だけど それよりも他愛がなくなんて事のない 平凡な日常こそ彗星のような はなやかさを持っている

というメッセージが作品に込められてる

劇中では あれよあれよと 彗星のようにハナは立ち消えて彼女はお星様になったわけだけど

きっと何年も胸に残り続けて輝く赤色彗星のように唯一無二の魅力が詰まっている

青春は瞬いて一瞬で消える彗星のように儚くてきっと忘れてしまうことの方が圧倒的に多い

だけどいつまでも心の中に残像として想い起こせる映画であることは間違いない

2020/6/1 追記

初演技とは思えないくらい素晴らしい演技で作品のポイント押さえてカヨを演じていたユミコテラダンスさんが急逝されました

いち鑑賞者としてここに哀悼を表すと共に表現者としてまだまだこれからもっと活躍されるはずだったのに残念でなりません

改めて御冥福をお祈りいたします
eye

eye