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冬の糸のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

冬の糸(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

漁村でヒロインは、漁師の父親と姉とその夫と4人で暮らしていたが、ある日、姉が事故で亡くなってしまう。残された父親は漁に出ることはなくなり、家に引きこもり姉妹のホームビデオを見て過ごす。代わりに姉の夫が海にでるようになるが慣れない仕事に悪戦苦闘していた。そんな義兄にヒロインはほのかな恋心を抱くようになって…という話。

以前、短編作品集を借りて、全作コンスタントに面白かった外山文治監督の作品。アイドルグループの仮面女子が主演の映画シリーズの一作。短編ながらもとても趣のある作品。
姉の死によって悲しみにくれる人々を、ヒロインの視点で静かに追っていく構成で、冬の港町の寒々とした風景と相まって暗い空気が全編に流れていた。周囲の人々に慕われていた姉の逝去の喪失感は大きく、登場人物たちは戸惑い、彼らの日々がどうしようもなく重く停滞している様子が繊細なタッチで映し出されていた。姉の夫は少しでも亡き妻に関わる者としてしがみつきたいと慣れない漁師となり、また、姉を死に追いやった事故の加害者家族は「事故の前の日に戻り、その日を毎日繰り返すことができれば」と悔恨の言葉をもらす。全体的に後ろ向きな彼らの思考に、ただ1人ヒロインが異議を唱え、姉の死から前に進むことを提案する展開がとてもしみじみと泣けて良かった。
父親役が元ボクシング世界チャンピオンの具志堅用高なのは驚き。演技はいまいちだが、個性は強い。
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