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セブン・シスターズのneroのレビュー・感想・評価

セブン・シスターズ(2017年製作の映画)
4.5
公開館がひどく少ないのが惜しいほどの傑作だぞこれは。

人口爆発により子供制限法が実施された未来といえば、結構使い古された設定でもあるが、収穫量増加を目指した作物の遺伝子組み換えにより多生児の出生率が急増するという自業自得設定が新しい。その結果、法により1家族が持てるのは1子のみ、あとは子供分配局により冷凍睡眠とされてしまう。
そんな厳しい管理社会で7つ子の姉妹が生まれる。母親は出産と同時に死亡し、姉妹は祖父の手で密かに育てられることになる。祖父は姉妹を月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜と名付け、自分の名前の曜日にだけ外出し、共通の人格”カレン・セットマン”を生きることを教え込む。

30年後、姉妹は年齢相応に個性を備えた女性に成長している。祖父はもういない。”カレン”は銀行の融資係で、7人の能力によって個室持ちに昇進したばかり。そんなある月曜日、出勤した”月曜”が戻らない。二人同時に外出するという危険を犯して、”火曜”は”月曜”を捜索に出るが、結局彼女も戻らない。そして”水曜”も・・・。
皆は何処へ? 同僚行員の恐喝は何故? 不審な”恋人”は誰の? そして子供分配局の隠された真実。
謎に翻弄され、分配局の襲撃から逃げ惑う残された姉妹。なかなかサスペンスいっぱい、ハードアクションいっぱいでスクリーンに釘付けだった。原題の“to”がつくづく上手い。

ツッコミどころが無いわけではないが、テンポが良くてすぐ本線に引き戻される。編集が上手いんだろう。全体としては、「ソイレント・グリーン」なんかを思い起こさせるディストピアSFだが、結構なスプラッタ表現もありつつ、30になった女の存在不安まで踏み込み、希望だか絶望だか分からない結末まで用意して、R15+のSFサスペンスとして123分目一杯楽しませてくれた。

冷徹な管理職から数字オタク、肉体派に実は処女のフラッパーまで演じ分けるノオミ・ラパスの七役演技もすごいが、特筆は、短いが非常に印象的に何度か挿入される子供時代の描写だ。この子役の演技に破綻が全く無いのには舌を巻く。一人七役だぜ!! しかも少しでも嘘くささを感じさせたらお終いっていう難しさだ。エンドロールは早くて見えなかったし、ポスターやチラシにも表示が無いんだよね。彼女は主役級でクレジットしてもいいと思うぞ。

[追記]
少女時代を演じたのはクララ・リード嬢(11才・英)だそうだが、これが初映画で、ほとんど情報がない。18年にも1本出演予定があるが日本公開されるかしらん。
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