ソラアユム

セブン・シスターズのソラアユムのレビュー・感想・評価

セブン・シスターズ(2017年製作の映画)
3.9
強制一人っ子政策『児童分配法』が施行された近未来国家:欧州連邦を舞台に、30年ひっそりと暮らし続けてきた7つ子姉妹の運命を描くSFサスペンス


惜しい!
序盤はかなり面白かったが……

GM作物が原因で多胎児が増加していったという背景、いかにもGM反対派が大半を占めるヨーロッパらしい思想が感じられますが、SF設定として新鮮で面白かったです。
ノオミ・ラパスの1人7役は演じ分けがちゃんとできてるし、SFガジェットや小物がいちいち凝っていて素晴らしい。

今作で描かれる物語は主に2つ。
7つ子姉妹の絆と家族の物語。
もう一つは近未来国家、管理社会の裏側に迫っていくSFサスペンス。
中盤あたりからこの2つの物語が並行して描かれる。

1番の問題は後者の物語で、これがなんの捻りもない手垢にまみれた近未来SFの定番ストーリーだった事。
アクション要素も結構多いんだけど、7つ子姉妹全員戦闘スキルがあるというわけでもなくごく普通の一般人なので、色々と御都合主義が目立つし、管理社会側が無能に見えてきちゃうんですよね。

じゃあ、家族の物語はうまくいっているかと言うとこちらも微妙で、唯々惜しいと感じる。
姉妹愛、家族愛をうまく描けているところは勿論多いんです。
徹底した家族内ルール、運命共同体であるが故に生まれる葛藤だったり軋轢だったりリスクだったり。
序盤はテンポ良くそれらを活かしつつSFドラマとしてかなり面白かった。
送信完了からモニターに映し出される"家族"と「愛している」の台詞は誰だって目頭が熱くなる事必至なシーンでしょう。

何よりも残念だったのは中盤以降、アクション・SFサスペンス要素が占める割合が多くなってきて家族の物語が希薄になってしまった事。
7つ子姉妹のキャラが充分に立っていないままSFサスペンスに突入していくので、せっかくの新鮮な設定が全然活きないんですよ。
演じ分けはちゃんとできているのに、7人の人物描写が不十分でどういうキャラクターなのかイマイチ掴めないまま、ある重大な結果を迎えてしまう。
姉妹の性格も後出しジャンケン的に説明台詞で済ませてしまっていて、後から「そういうキャラだったんだ」と理解させられる始末。
同時並行して家族の物語を描こうとはしているんだけど、サスペンス風タッチから姉妹同士の会話になると途端に弛緩した演出になったりで緊張感が損なわれる。
やっぱりこの設定はSFドラマでこそ輝くんじゃないかと思ってしまいました。
私は中盤以降の陳腐なSFサスペンスよりも、この7つ子姉妹の家族の物語をこそ見たかった。
どうせなら管理社会の影で懸命に生きる7つ子姉妹の何気ない1週間をドラマタッチで描いて欲しかったです(願望)

ノオミ・ラパスの魅力が詰まった作品なのは間違いないのでファンの方は必見かと。
個人的に作品自体は惜しい!が、ノオミ・ラパスのアイドル映画としては充分成功していると思います。