青眼の白龍

セブン・シスターズの青眼の白龍のレビュー・感想・評価

セブン・シスターズ(2017年製作の映画)
3.8
傑作スプラッター『処刑山 -デッドスノウ-』や『ヘンゼル&グレーテル』を手がけたトミー・ウィルコラ監督によるSFサスペンス。一人っ子政策で人口が抑制されている近未来を舞台に、七つ子の女性たちが生き残りを賭けて抵抗する話。月曜日・火曜日・水曜日……という名前を与えられたヒロインたちが、各曜日ごとに交代で一人の人間を演じるという設定がよい。全国民がGPS付きの腕輪で管理統制されており、僕のようなディストピア好きにはたまらない世界観だろう。
単純なレジスタンス映画かと思いきや「月曜日(長女)に何が起こったか?」という謎をめぐって、ミステリー仕立ての物語が展開する。『リベリオン』や『ウルトラ・ヴァイオレット』のような爽快なアクションこそないが、わりと容赦ないバイオレンス描写に緊迫感は十分。特に、マンション襲撃の後は手に汗握るシーンが続くので、観ていて飽きることはない。主人公の姉妹たちは肉親以外誰も信用できないシチュエーションに置かれ、追う側・追われる側が明確なので比較的筋立てもわかりやすかった。
いくつか不満があるとすれば、もう少しケイマンや支配層について掘り下げてほしかった点だろうか。あれだけの横暴がまかり通るのだから、意思決定プロセスと国民の葛藤をより詳しく描いてもよかったと思う。屋外の描写には違和感がなかったのに、研究所に侵入した途端に警備システムや人員体制がお粗末になったのも気になる。何より、黒幕の動機がやや弱いように感じた。いくら美談のように「子供たちを救ったのよ」などと言われても、多数の死傷者を出した張本人なので納得できるとは言い難い。
終盤がやや残念な本作だが、それでもトランプ批判のプロパガンダみたいなディストピア映画が粗製乱造される昨今、SF映画として一定のクオリティに達しているのは素直に評価できる。中でも特筆すべきは、一人七役を演じたノオミ・ラパスの存在だろう。リーダータイプ、不良タイプ、格闘タイプ、知性派タイプなどの役柄を見事に演じ分けている。また『101』のクルエラ役でお馴染みグレン・クローズや、名優ウィレム・デフォーなどが脇を固めており安心感がある。ストーリーテリングも同監督の初期作品に比べて、技術が大きく向上しているのを感じた。ウィルコラ監督の次回作に期待したい。あと『処刑山2』に字幕つけて早く国内DVD化してほしい。早くしてほしい。