ピッツア橋本

ワンダーウーマン 1984のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
4.8
“平和の願いは取り消さない”
(前作未鑑賞。4DXでの試写会)

触って願いを念じると一つだけ叶えてくれる石が発見され、それに翻弄されていく人間の願いと代償をテーマにしたアクション哲学映画。

ダイアナ(ワンダーウーマン)に憧れる冴えない同僚女性学者は彼女のような強く美しい女性になりたいと願い、借金と嘘まみれの石油採掘会社の社長は“俺自身を石にしてくれ”と願った。
そしてダイアナが願ったのは、亡き恋人との再会であった。

冒頭のSASUKEと流鏑馬を足して割ったような聖なるレースから、アクション成長物語を想像したが全然違った(笑)

上記したように本作のテーマは“願いと代償”
彼がストーンに願った「私自身をストーンにしてくれ」というアイデアがものすごく良い。ストーリーを興味深く大胆に転がしてくれた。
「アラジンのジーニーに俺自身がなって、ランプこすった奴らにけしかければ無限に俺の願い叶えられるじゃん!!」
という邪道中の邪道なアイデアだ。
その欲望と悪意が入り混じった願いによって奇想天外な事件が次々と起こっていき、実に興味深い展開が繰り広げられる。

人々の願いの中にはかなり際どい人権的なネタもありたじろいだ。
ひと言で願いとはいっても、切望もあれば短絡的な欲、見栄や気の迷いからくるものもある。あらゆる種類の“願い”のケースが本作ではシレっと提示されていて、その都度自分に置き換えてすごく考えさせられてしまった。

てっきりワンダーウーマンが人類最強女子無双を決め込んで何千人もの悪を倒していくアクションなのかと思いきや、誰一人殺めずに戦う…というか諭していく彼女の孤高の美学に乾杯。
そして最強の正義の戦士だけでなく、女の脆さもちゃんと描いてるところが美しい。

これ以上語るとネタバレオンパレードになってしまいそうなので、まとめに入ると
アクションよりも哲学や道徳に大きくウェイトを置いた健全な成人向け映画だったように思います。
ただクライマックスの黄金聖闘士(ゴールドセイント)のようなフォームはとてもゴージャスで、最も80年代を象徴していたように個人的には思いました(笑)

公開時期がこのクリスマスシーズンにズレてしまったのは、もしかしたら不幸中の幸いだったかもしれない美しいラストにもこうご期待。

大変に良作でした。
ピッツア橋本

ピッツア橋本