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ワンダーウーマン 1984のFilmojaのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
3.5
今年最後の映画納めは公開が延びに延びた“驚異のプリンセス”待望の続編。
1984年の世界を舞台に、ダイアナが縦横無尽の大活躍!…と思いきや、前作の傷心を引きずるダイアナの悲恋が胸に迫る、在りし日のロマンスを引き継いだ往年の恋愛映画の趣き。

前作のような世間知らずな王女さまの、戦争を止める世直し一揆!とは打って変わって、真実の愛の素晴らしさをこれでもかと謳歌するダイアナ。
前半部分の多くはドラマシーンがメインで、「ん?このテイスト、DC映画だっけ?」と戸惑うけど、ヒーローとして辛く切ない決断を強いられるダイアナのモラトリアム卒業ムービーと捉えれば、80’sコテコテの王道展開も納得。

ステレオタイプな人物描写や単純明快なストーリー、当時のファッションやカルチャーをおちょくったアレやコレはありがちだけど(劇伴はハンス・ジマーがメインで、もっとヒット曲が聴きたかった)、資本主義社会の功罪が膨張し、際限のない欲望が渦巻く時代に、本当に大切なものは何か、人生の真理を追求することの尊さを世界に問いかける。

クラシカルなアメコミ映画にオマージュを捧げた絵に描いたようなファンタジー描写に賛否はあれど、あれだけ高貴で堂々たる演技を魅せつけられたら、こちらも屈服せざるを得ない。ガル・ガドットが演じるワンダーウーマンだからこそ成立する演出だと思う。そういう意味では、今作でも気高き王女を演じたガルに喝采を贈りたい。

男たちの戦場で美しく敵をなぎ倒す前作のようなカタルシスはないけれど、自身の愛も、同性の嫉妬も、拝金主義の守銭奴も、世界中の身勝手な欲望もすべて呑みこんで、ただひたすら今の自分を肯定すること、ただひとつも無為な命などないということに気づかせてくれる本作の救いのメッセージは、未だ混迷の時代を生きる私たちにも響くのではないだろうか。
クリスマスを彩るラストシーンのきらびやかな光景に、コロナ後の世界への希望を感じて、祈るような心持ちになってしまった。

同監督・主演で3作目の製作も決定したようで、次作ではいよいよ現代を舞台に、彼女のさらなる活躍を期待したい。



振り返ると今年は、コロナ禍で軒並み大作の公開延期が相次ぐ中、上映に踏み切ったワーナー(「ハーレイ・クイン」「TENET」そして本作)の気概を讃えたい。
そのワーナーも来年はついに配信に軸足を置く方針のようで…やはり本国での興行不振が偲ばれる。

来年こそは劇場に客足が戻り、映画業界も観客も安心して作品を共有、共感できますように。
筆不精の自分ですが、今年も皆さまの様々なレビューに感心しきり。快いコメントに感謝します。
来年も素敵な映画鑑賞を願って、良いお年を。
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