ピートロ

ひいくんのあるく町のピートロのレビュー・感想・評価

ひいくんのあるく町(2017年製作の映画)
3.8
山梨の市川大門で昔から地域住民に愛されている謎の人物「ひいくん」のドキュメンタリー(大学の卒業制作らしい。すごい)。
ぼくも同県出身で本作の舞台の近くの町にも数年住んだことがあるので、風景や方言が懐かしかった。
マンションの隣室の住人の素性もわからず、殺伐とした満員電車に揺られ、ベランダに干した洗濯物の洗剤の芳香にさえクレームが出るような東京砂漠で日々、精神を摩耗している身には、本当にハッとさせられるところが多かった。
親の代から顔見知りのコミュニティだからこそ可能な「やさしい世界」なのだが、その一方で閉塞感や停滞感に支配される「こわい世界」であることも知ってる(空族の『国道20号線』『サウダージ』)。
上映後に青柳監督と空族の相澤虎之助とのトークがあった。
青柳監督が水口屋というSONY商品を扱う電器店の話につづけて「まあ、言ってみればひいくんも『ウォークマン』なんですけどね」。うまい!座布団一枚!