しらす

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのしらすのレビュー・感想・評価

4.0
ダニエルボンドでしか描けなかった007!
ジェームズ・ボンドというひとつの時代の区切り!
キャリー・ジョージ・フクナガ監督
ダニエル・グレイグ主演

「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」

初見をドルビーシネマ、
2回目をIMAXで鑑賞。
初見時は正直戸惑いましたね。
勿論、007らしい部分もありますが、映画史におけるヒーローアイコンのジェームズ・ボンド像からは今作は大きく逸脱しています。

思えば、ダニエルグレイグは常に過去のジェームズ・ボンドと戦っていた人だなぁ、とそう思います。
過去のジェームズ・ボンドとは違う、金髪で碧眼で‥碧眼!
これがね、今回はこんな形で生かされるとは!

見た目だけでなく、ダニエルの資質からすると過去作のジェームズ・ボンドって、明らかに人間性が違っていて‥
いい車、いいスーツ、いい女、それを乗りこなす俺が最高に良い男!
っていう、まあそんな馬鹿だけど憎めない男がボンドだと思うんですけど、恐らく
ダニエルはそういう人柄ではないんです。
真面目でストイックで紳士。
そこら辺はドキュメンタリーの「ジェームズ・ボンドとして」で伺えます。

過去作から常に、歪なものがダニエルポンドにはあって、葛藤と自己否定があるんですね。だからダニエルボンドの敵って、己の二面性というものになっていくんだと思います。今回のラミ・マレックのサミィもそうで、まさにボンドの亡霊の様な存在。
スパイとして他者に潜入して、いのちの選別をするという事の罪と奢り、というものとボンドが向き合うという物語になっています。

あとはジェンダー映画でもあって、そこは後任007のノーミとか、キューバのエージェントのパロマとかにハッキリ現れていて‥今までのボンドガールのセオリーに反する事ばかり描かれているんです。
実は今回からボンドガールではなく、ボンドウーマンと呼称されているんですね。これは製作陣の決意みたいなものを感じて胸が熱くなりました。

特に、アナ・デ・アルマスのパルマですね!キュートでちょっと抜けてて、セクシーで最高なんですけど!肝心なのはボンドに抱かれるための女性ではないって事です!
本来のボンドセオリーだと、彼女とワンナイトしてますよね。でもそんな事をさせないぞ!と。性的な魅力だけではなく、もっと人間の本質的な魅力をもった女性と一晩タッグを組んで肩を並べて戦う!という新時代のボンドガール‥じゃなかったボンドウーマンの幕明けを感じました。

あとはキャリー・フクナガ監督らしいリアルスティックな戦闘描写も凄かった!
爆発によるスタン描写!
鼓膜が飛ぶあの感じ!
うわ!今回の007ってこのリアリティラインで来るの!?と最初にかましといて、
後半の塔の階段室の怒涛の銃撃戦!

さすが!あの傑作ドラマ、トゥルーディテクティブのアクションを撮った監督だな!と思わせる、素晴らしいダニエルの立ち回りとカメラワークでした。
最高!

今回はダニエルがにこやかに映画を宣伝してるのが、なんだか嬉しくなります!
まるで憑き物が落ちたように。
やっぱり、ボンドという60年代から続く‥悪く言えば古ぼけたヒーロー像というものをアップグレードさせたかったんだな、とそう思います。
そして今作で遂にそれを実現できたと感じているんだろうなあ、と。

これは間違いなくダニエルにしか出来ない事だったと思います!
さよならボンド!
お疲れダニエル!
しらす

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