悶

007/ノー・タイム・トゥ・ダイの悶のレビュー・感想・評価

5.0
(このレビューは、2021年10月に劇場鑑賞し、他のサイトに投稿したものですが、今回、レンタル開始となり、レンタルで鑑賞をお考えの方の参考になればと、投稿します。)

【本作品鑑賞のきっかけ】
007シリーズは、これまでの24作はすべて鑑賞しており、好きなシリーズ。
また、第21作「カジノ・ロワイヤル」から5作、ボンド役を務めてきたダニエル・クレイグの最終作ということもあり、必見と思っていましたので…。

【率直な感想】
ダイニエル・クレイグは、抜擢された時、既に21世紀となっており、正に、21世紀のボンドはこれだ!ということを体現してきた俳優だと思っています。
また、制作陣にも、21世紀に相応しいボンド像を造ろうという意気込みが感じられるものでした。

本作品のテーマは何か?とても重要なことが、物語前半に出てきます。

<本当に愛している>
007と言えば、ボンド・ガールですが、今回は、ベッドインするのは1人だけ。
その彼女に対してボンドは、こう言います。
I have loved you.
「愛している」というのは、「I love you.」で、これは通常のボンドの言葉。
でも、have+過去分詞で現在完了形にすると、「ずっと君のことを愛していた。その気持ちは今でも変わらないよ」という深い意味になります。
つまり、本気で愛していることになる。
【(注)このセリフは、劇場鑑賞時に聞き取ったもので、もしかすると、聞き違いかもしれません。レンタル鑑賞による確認はしていないので、間違えていたら、申し訳ありません。ただ、間違っていたとしても、以下の感想に変わりはありません。】

彼女との気持ちのすれ違いは描かれるものの、本当に愛する者が現われたボンドは、スパイという枠組みを超えて、必死で、人類の敵との戦いに挑んでいきます。
なぜなら、負けたなら、それは、本当に愛する者を失うことにもなりかねませんから。
後半で明かされる衝撃的な事実も、ボンドとしては、意外ではなかったのかもしれません。

<ラストについて>
結末についての感想は述べません。これはどう書いても、ネタバレになりますので。
ただ、エンドロールが終わった後にある期待感を持っていました。
007の作品すべてではないけれど、最後の最後に制作者のメッセージが表示される。
今回は絶対に。
そして、そのテロップは表示されました。ほんの一瞬でしたが。

以上で感想は終わりでもいいのですが、思い入れの強いシリーズなので、以下の考察をお付き合いいただければ、幸いです。

まず、ダニエル・クレイグ版ボンドのこれまでを振り返り、これまで(特にシリーズ初期の頃)との違いを述べます。

<これまでとの違い>

1.Mが女性になった
これは、前のピアース・ブロスナン版ボンドからなのですが、007の直属の上司にジュディ・デンチを起用。これは、当時、結構驚きました。
ボンドと言えば、女性を手玉にとって、諜報活動をする人物。その上司に女性とは。時代は変わったな、と。
そして、このMは、メインストーリーに絡み、「スカイフォール」ではほぼ主役級に。なお、今作では、男性に戻っていますが。

2.Qが若返った
MI6の秘密兵器開発役。ボンドより年上の年配俳優が演じていたものを、30代の若者に。やはり、IT技術に長けていないとね。今作では、私生活の一部が披露されます。

3.マニー・ペニーが強い女性に
Mの美人秘書であったが、きちんと武器も使いこなせる、強い女性であることが明らかに。今作でも、秘書の席を飛び出して活躍します。

4.「カジノ・ロワイヤル」を完全映画化
原作者イアン・フレミングの007長編第1作なのに、何故か、パロディ映画として1967年に本シリーズとは別に映画化された。
でも、やっと、本シリーズで、原作に忠実に映画化されました。

5.「スペクター」の復活
シリーズの初期には、007の敵役の組織と言えば、スペクター。これがシリーズから姿を消して、何十年か?
でも、奴らは生き残っていたのですね。21世紀らしく、装いも変えて。強いヒーローには、最強の敵が必須。

次に、これまでと変わらぬ、定番を。

<変わらぬ定番の構成>

1.冒頭のシーン
お馴染みのボンドのテーマが流れて、上映開始。ガンバレルに対し、007が銃弾をこちらに向けて発射。その後、ガンバレルの丸い穴が拡大し、物語世界へ。
そして、派手なアクションシーンが展開し、そのエピソードが終わると、画面にタイトルが。そこから、タイトルを題名にした主題歌が流れる。背景は、幻想的な画面構成。これが終わると、いよいよ本編へ。
この流れは、本作品でも踏襲していました。

2.ボンド・カー
本作品では、数種類出てきますが、1種類は、例によって、普通の車に見せかけて、実は、様々な機能が備わっているというもの。アクションシーンに花を添えていました。

3.Qの秘密兵器
多くの作品でそうですが、Qは、大がかりな秘密兵器と、小型の秘密兵器を開発し、ボンドに託します。特に、小型の秘密兵器は、クライマックスに近いシーンで、ボンドが絶体絶命に陥ると助けてくれるもので、本作品でもそのような構成になっていました。

4.ウォッカ・マティーニ
お酒のカクテルとして、有名なマティーニ。通常はジン・ベースですが、ボンドはウォッカ・ベースが好み。本作品にも登場。
セリフでは、「マティーニを」しか出てきませんが、バーテンダーの脇に、スミノフのボトルが置かれていたので、ウォッカ・マティーニでしょう。

【全体評価】
本作品は、21世紀らしく変えてきた部分と、これまでと変わらぬ部分を巧く融合したダニエル・クレイグ版ボンドの最後に相応しい良作でした。
長年のファンとして、文句なしの満点でした。
悶