『007』25作目
ダニエル・クレイグ主演5作目で最終作品
MI-6を退職し、ジャマイカで愛するマドレーヌと平穏な日々を過ごしていたジェームズ・ボンド。そんなある日、彼のもとにCIA諜報部員であり親友でもあるフィリックス・ライターが現れ、誘拐された科学者の救出を依頼する。現役復帰したボンドは、危険な最新技術を操る正体不明の敵と過酷な闘いに身を投じていく…
今作から「ボンドガール」と呼ばれていた女性たちが「ボンドウーマン」と呼び名が変更になり、時代の変化が感じられる。これまでは、男の欲望の対象としての位置づけられていた女性たちが、男と対等な存在として扱われ、自立した働く女性たちという位置付けになっている。
また、3人いるボンドウーマンの1人に00の称号を与えた黒人女性にしたり、Qの恋人が男性であったりと、人種差別やLGBTQを意識した現代風の要素を盛り込んでいる。
初期の頃の007は開始早々に濃厚なベッドシーンがあったのに、クレイグボンドは女性にすぐがっつかない上品な男として描かれている印象がある。そんなクレイグボンドシリーズも本作でラストという感慨深さ。
前作の『スペクター』が過去との因縁に決別した集大成のような作品で、今作はその先の作品を締めくくる番外編のような位置付け。
そのため、アクションもこれまで以上に力が入っており見応えはあったのだが、個人的には蛇足のようにも感じてしまった。
今作は敵役であるサフィンの掘り下げが深くなされていないため、これまでの敵と比べると薄っぺらく物足りなさを感じた。また、不気味な能面や、土下座、衣装、サフィンのアジトの内装など、中途半端な日本要素があまり必要に感じられなかった。監督が日経アメリカ人だから盛り込んだのかもしれないが。
パロマ演じるアナ・デ・アルマスの黒いセクシーなドレスに身を包んだ美貌には心を掴まれた。登場シーンが少なく名残惜しい。
ボンドが最後の戦いに身を投じていくラストまで哀愁が漂いずっと重苦しい雰囲気がなんとも切ない。そして、シリーズを通してこれまでにない悲しい終わり方は感動してしまった。熱狂的なファンからすると賛否両論が巻き起こるラストなのかもしれないし、ビックリする展開だった。
青い瞳のジェームズ・ボンドの余韻が残る。
クレイグボンドシリーズを通してやっぱり『スカイフォール』が1番好みだったな。
今作は期待しすぎたのかもしれない。それでも、最後まで駆け抜けようとするダニエル・クレイグの気迫を感じれる良い作品だった。次のジェームズ・ボンドが誰になるのか、今後どういった物語になっていくのか凄く楽しみ。
