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私がモーガンと呼んだ男/私が殺したリー・モーガン ジャズ史に刻まれた一夜の悲劇の真実のnorimのレビュー・感想・評価

4.0
失われた才能はあまりに大きかった。ただただ切ない、そういう映画。

天才と言われたトランペッターのリー・モーガンは1972年2月19日深夜、イースト・ヴィレッジのジャズ・クラブ『スラッグス』で妻でありマネージャーでもあったヘレン・モーガンによって射殺された。そこまでの経緯を何人かの証言者、そしてヘレン・モーガン本人へのインタビューを織り交ぜて検証する。雪のマンハッタンの描写が美しくも儚く、モーガンの音楽はどこか悲しい。

ジャズファンにはよく知れた史実以外の事実はあまり見当たらないので、普通のドキュメンタリーという感じではない。しかしあの夜に至るまでの経緯を詩的に、美しく描くことでその切なさを見事に表現している。誰が悪いわけでもなく、運命の糸があの夜に導かれる過程はやはり悲しい。そこにはこの時期数多くいた才能に押しつぶされたジャズマンの姿があった。
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