小一郎

We Love Television?の小一郎のレビュー・感想・評価

We Love Television?(2017年製作の映画)
3.7
国民的コメディアンの欽ちゃんこと萩本欽一のドキュメンタリーで、監督がアポなしロケで高視聴率を叩き出した『電波少年』の"Tプロデューサー(T部長)"となれば、2人の番組をリアルタイムで見ていた自分としては、反射的に期待が高まってしまうのだけれど、ドラマ要素控えめの、いい仕事をするにはどうしたら良いかについて考えさせる、まっとうな内容だった。

全盛期、視聴率30%を超える番組のレギュラーを1週間に3本務めていた「視聴率100%男」の欽ちゃんに、Tプロデューサーが「30%番組を作りましょう」と特番の企画を、アポなしロケで持ちかける。

大喜びで承諾し、すぐさま自宅に招き入れた欽ちゃんに、Tプロデューサーはハンディカメラを渡し、番組制作までの様子を撮ってくれ、と。欽ちゃんの仕事の一部始終をカメラに収めることで、斜陽化しつつあるテレビ業界が輝きを取り戻すためのヒントを得ようということなのかな。

笑ってもらうにはどうするか、つまりいい仕事をするにはどうすればいいか、それは多分、仕事に携わる者すべてが、必死になって考えることなのだろうと思いながら見ていたら、そんな感じだった。

自分の経験を振り返るとよくわかる。普通、誰でも与えられた仕事はきちんとこなそうとする。だから、きちんと与えくれと。どうすれば良いのか言ってくれ、わかるように教えてくれ、と。

でもいい仕事をするためには、一人一人がどうすればよくなるかを考えることが必要なのだと、この頃つくづく思う。人が一人で考えることのできる量には限界があるから、それぞれの持ち場の人が考えたことを集めて洗練することなしに、いい仕事はできないと思う。

欽ちゃんのような立場の人は、皆に考えてもらうよう上手く仕向けなければならない。欽ちゃんは、相手に応じ、時と場合に応じ、プレッシャーを与えたり、ほめたりして、仕事に携わる人々に考えさせようとする。

その象徴が演出。台本通りしっかりコントの稽古はするけど、笑いをとる担当のタレントに「本番では違うことをやれ」という。つまり大枠はきちんと決めておき、肝心の部分は自分で考えろ、と。演者から伝わってくる緊張感にドキドキし、素人のキャスティングにハラハラする。そこから生まれる笑いだから面白い。

番組のタイトルは『新欽キングshow』って、この映画の自分的テーマにぴったり。映画で少し見ただけだけど、かなり面白く、もっと見たかった。個人的には欽ちゃんはいい仕事をしたという気がする。

番組の視聴率がどうだったかといえば見てのお楽しみって感じだけれど、この後の欽ちゃんの姿を見ると、皆が考えるようになるには、自分が一番必死に考えて行動し、その熱が伝わっていくことで、実現できるのではないかと。

テレビは落ち目かもしれないけれど、テレビの仕事をする人はテレビを愛し、熱をもって仕事をしているのか、と。そしてこのことはテレビの仕事に限らない、そんな感じの映画かな。

●物語(50%×3.5):1.75
・面白かったものの、やや自己啓発的かな。期待したほどのドラマはなかった。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・欽ちゃんに尽きるけれど、河本準一さんって、やっぱり面白いんだね。

●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・ラストの方、ちょっと良かったかな。