映画監督のアニエス・ヴァルダと写真家でアーティストのJRがフランスの田舎を旅してそこに住む人々(やヤギ)のポートレートを建物の壁に貼り出していくロードムービー風ドキュメンタリー
とは言っても映す対象物の選択、配色、構図などカメラワークはかなり考えられていてフォトジェニックな演出がなされている
違う村へ行っても同じことをやっているので単調で退屈しそうに思うけど人の数だけ違う人生があるしJRの作品はとても魅力があるので進むにつれどんどん引き込まれていく
最初は撮られることを恥ずかしがっていた人が作品を見て誇らしい表情になっていくのはアートが持つ素晴らしい力だなと思った
女性の権利を主張し続けていたヴァルダらしい作品を作る場面もあった
後半は海岸に落ちた要塞にかつて一緒に仕事をしたギイ・ブルダンの写真を貼り付けたり、素直に老を認めるアニエスの身体の一部の写真を列車に貼り付けたりと彼女自身の人生を見つめ直す旅へと変わっていく
思いがけず『アンダルシアの犬』の眼球切断画像が流れてちょっとびっくり
二人は54歳の歳の差があっても辛辣な意見も言い合ったりとお互いの感性を信じ合い人として尊重し合っている
最後はちょっとドラマチックな演出があって『はなればなれに』みたいにルーヴル内を車椅子を押して駆け抜けたあとゴダールに会いに行こうと提案する
JRがゴダールに会えなかったアニエスを励ますために絶対に外さなかったサングラスを外してあげるところはじんとなる
オープニングで早々とクラファン出資者の名前を流すのも新鮮、みんなで作った感が出る
アニメーションもかわいかった
作品も彼女自身もお洒落でユーモアがあってキュートであたたかくて観るほどに好きになっていく