秋日和

泳ぎすぎた夜の秋日和のレビュー・感想・評価

泳ぎすぎた夜(2017年製作の映画)
3.5
もしも自分が6歳の男の子だったなら、たとえ夜中にポテトチップスが食べたくなったとしても、あんな風に一階まで降りていく勇気はなかったと思う。仮に自分がその作戦を実行したとしても、棚の高い場所にしまってあるお菓子の袋を元に戻すときも、椅子から降りるときも決して音を立てないように気をつけたに違いない。少なくとも、彼みたいに椅子から飛び降りたりなんてしない。
眠れない夜にはお絵描きをして、眠くなった朝には用意されたご飯に箸をつけずにソファで居眠り。お腹がすいたら、ポケットに忍ばせたミカンを食べれば良い(日頃はそんなことしないし、大人はなんていうか知らないけど、我慢できなかったら一房ずつ千切らずにかぶりついちゃえば良い)。みかんの皮が落ちても、それを食べる為に外した手袋が落ちても気にしない。
魚屋で、毎日のように市場に通うお父さんは朝が早くって、だからあの子は普段お父さんにあんまり会えないのかもしれない。だから寂しいのかもしれない。それでも彼は、そのこととは関係なく逞しい。その逞しさと言ったら、犬と吠え声の勝負をしても負けない程だったりする。
些細なことに注意を払わない、気ままな子供時代を最大限に有効活用している彼が少しだけ羨ましかった。前述の通り手袋を片っ方なくしたんだから、後で怒られるんだろうけど。でもあの子はたぶんへこたれない気がする。とは言え、子供が目をつぶっているときに注がれる親の愛情にはなかなか気づかないものなのかも。
雪国ならでは!なネタ(電車に乗るときに扉を開けるボタンがついてることや、車のワイパーを立たせておくことなど)もつまった良質な子供映画。キアロスタミとは違った距離感を保ちながら、無言で彼の冒険を捉えていく。