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泳ぎすぎた夜のQTakaのレビュー・感想・評価

泳ぎすぎた夜(2017年製作の映画)
4.5
映画に求めるものってなんだろう?
それは、「映画だから出来る表現との出会い」ってことはないだろうか。
そんな事を考えさせられる一本でした。
唯一無二の一本ですね。
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小学校1年生の男の子の冒険を撮った映画だね。
有る意味、「はじめての…」的な気もしないでもない。
なんて、思いながら見始めたけど、ちょっと違う、いや、全然違う。
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主人公は、たから君、小学校1年生。
雪の降る、冬の弘前郊外が舞台。
冬の一日、早朝、まだくらい時間から夜まで、丸々一日ね。
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前編通じてほとんどBGM無し。
ちょっとピアノの音が入るくらい。
セリフは無い。
だれもしゃべらない。
強いて言うなら、「うぅ〜、ワン。ワン。」
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静かに、でも、至近距離で撮られているので、とても身近に見える映像が、いつの間にか少年と寄り添うような距離感で流れて行く。
だから、少年の仕草、行動が、本当に自然であることに驚く。
というか、自然で当然なのだけども。
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朝早くから魚市場へ仕事に行くおとうさん。
その姿を、夜明け前に見送って、眠れなくなった少年は、おとうさんに会いに行くことに決めた。
そこから大冒険が始まるのだけれど。
そこからどうなるかなんて実はどうでも良くって、
「そこからの顛末をこの少年はどう演じるのだろう?」ってことが一番のポイント。
でも、そこは全くの杞憂でしかなくって、彼は、実に堂々と演じきってしまっている。
そこは、大人たちの色々な努力も有ってのことだろうけどね。
でも、セリフ無しで、雪原をひたすら歩き、電車に乗り、街をさ迷い。
その途中途中で、居眠りもし。
この自由すぎる姿は、本当に人を魅了する。
この子は、凄いのかもしれない。
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キャストは、ほぼ少年の実の家族。
そのへんも、少年の自由な仕草や表現に繋がっているのだろうね。
そういえば、犬の「はな」も優しそうなワンコだったな。
そういう家族なんだね。
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ラストシーン、お父さんが夜遅く帰ってくる。
(お父さん、魚市場の他に、除雪の仕事もしているみたい。)
結局、少年は、丸一日、お父さんに会えなかったね。
お父さん、ちょっとだけ少年の横で一緒に寝てあげる。
少年は、ぐっすり寝ちゃってて、気付くはずも無く。
今日は、いっぱい歩いちゃったからね。
(いっぱい泳いだからね。)
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とても不思議な気持ちになった映画でした。
静かな映画っていいですね。
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ちょっと気になったこと。
少年の描いた絵について。
少年は、お父さんの仕事場の事を思いながら色鉛筆で絵を描きました。
魚と、タコと、亀?
魚市場に、亀?いませんよね〜
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