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泳ぎすぎた夜のzer0ne0のレビュー・感想・評価

泳ぎすぎた夜(2017年製作の映画)
5.0
五十嵐耕平監督の作品がもつ多様さのセンスが好きだ(ダミアン監督はベストマッチなのだろう)。
本作は作り手のスタンスの素晴らしさに加え、何よりも鳳羅くんの存在が素晴らしい。
どんな俳優にも真似できないと思わせる生の表現であり、演技とは反応なのだ、という事実を見せつけられた。
演出を押し付けるのでなく、あるものをねじ曲げるのでなく、受容し取り入れる監督達の手によって、スクリーンに生きた時間、奇跡的な時間がながれていた(音の使い方や配慮、照明など素晴らしい)。
その嘘のない生さがスクリーンを越えて現在とリンクし没入感を生み、館内が白い世界となり、あの頃が今となる。
まるで自分が冒険しているかのような感覚、ノスタルジックな体験。
少年の思いつき、孤独、旅、抵抗、想いが心をゆさぶる。
(『息を殺して』でもスクリーンという「境界」を越えて異次元へと誘う体験があった)

しかし本作は、難解で複雑な構造をもった作品ではなく、かといってミニマルで洗練されたアート作品でもない。
ありふれた採点、つまらない批判等は不可能というかこの作品には不粋だ。
むしろ言葉はいらない。
ただ奇跡的な時間だった。
彼が世界を飄々と泳いだ時間が頭に残り離れない。
この映画を観れてよかった。
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