岡田拓朗

友罪の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
4.1
友罪

犯してはいけない罪を犯してしまった罪悪感をいかに背負って生きていくか。
その罪は重ければ重いほど、関わる人が多ければ多いほど、優しい心を持っていれば持っているほど、罪悪感として消えることなく残り続けて一生のしかかる。

あらゆる罪悪感はそれを起こしている原因となることが解決すると少しのもやもやは残るものの基本的にはスッキリして日常生活へと戻ることができる。

ただし取り返しのつかない罪や自身の中で消したくても消せない過去は一生その罪悪感とともに生きていかないといけない。
自業自得であることはわかる。
それでもその重たい罪悪感を一生背負いながら生きないといけない辛さは、経験したことのない自分にはわからないくらいに深く重くのしかかるものになるのだろう。

今作ではあらゆる罪悪感をあらゆる立場、タイプからの描写として描くことで、あらゆる人の罪悪感に対しての向き合い方、何とも言えない辛さ、いたたまれなさ、そして人間の本質と多面性を表現している。

人間だからこそ悩みもがく。
人間だからこそ壊れる。
人間だからこそ執着する。
人間だからこそ怖くなる。
人間だからこそ不安になる。
人間だからこそホッとする。
人間だからこそ他人のことを深く知りたくなる。
人間だからこそ大切な人を守りたくなる。
人間だからこそ同じ過ちを繰り返さないように行動を変えられる。
人間だからこそ孤独になりたくない。
人間だからこそ罪悪感を抱えながらも生きていたいと願う。

物語を通して深く幅広く本当に色んな人間の本質が描かれている素晴らしい作品。
人間は表には見えないだけで、色んなことに悩み苦しんでいて、無駄なことも考えてしまって、たくさんの罪悪感と向き合いながら生きている。

そこにはもはや「人間」という言葉で一括りにするのもナンセンスなのではないかと思うくらい様々なタイプがあって、多面性を持っている。

やってしまった罪は罪悪感とセットで隠したい。
それでも本当に申し訳ない気持ちと罪悪感を減らしたい思いから、行ったことを隠しながら罪を償おうと悩みながら色んなことを行う。
それが人間の弱さであり、少しばかりの救いのある優しさでもある。

人間は生きていくだけでもこんなにストレスフルで、そんな中で取り返しのつかないことをしてしまったらより生きることに申し訳なさすら考えてしまうようにならざるを得なくなる。

過去は消せないし、過去にも戻れないけど、過去を受け入れて向き合いながら今を生きることはできる。
むしろそれしかできない。弱い。

取り返しのつかない罪と罪悪感にそれぞれの向き合い方で向き合いながら、それでもそれぞれの生き方で生き続けるあらゆる人たちを見たとしても、向き合い方と生き方の正解なんてわかるはずもなく、そこにはただただ苦しさだけが残った。

人間であれば大なり小なり罪悪感を感じることを行ってしまうことは必ずあると思う。
そこからできれば逃げたいと考えるのが普通であると思うし、自分もそう思ってしまうことがある。弱い。でもそれが人間でもある。
でも今作で出てくるそれぞれの登場人物は逃げられるような重さの罪ではないくらいに重い。
背負い向き合わざるを得ないのである。

そんな逃げたくなることに対してどう向き合って生きていくのか、今一度考えさせられた作品でした。

考えながら鑑賞すればするほど、物凄く重くのしかかってくるので、どのように鑑賞されるかはお任せしますが、自問自答をして自分と向き合いたいと思っている人はぜひ鑑賞を!
心に深く響き残るものがあると思います。

P.S.
キャストにおいても、瑛太、夏帆、山本美月が出てることからかなり注目してましたが、今作は夏帆の演技が個人的には圧巻でした。
岡田拓朗

岡田拓朗