もうひとつの『ヘブンズ・ストーリー』
人が人を信じるとはどういうことなのか?
もし、自分の友人がそうだったら?
「想像するのよ!」
富田靖子の叫び声が聞こえてくる。
登場人物の全ては世間から白い目で見られるような過去を抱え、生きるためにひた隠し、誰にも打ち明けられずいつも怯えて暮らしている。たまりに溜まったドス黒い感情は絶え間なく湧き出てくる。
瑛太と生田斗真の巡礼は儀式的なもので、それで何か解決の糸口が見つかるわけではないことぐらい当人たちは知っている。
重要なのは、自分と向き合おうとするための行動を起こしたと言う事だ。
それは"想像"し始めたことに他ならない。
場所も時間も全く違う巡礼の終着地で、振り向く二人の目線がピタリと合う。
それは今まで絶えず自分の中に存在していた"世間"という名のもうひとりの自分に絶縁状を叩きつけ、互いの想像上の地平線で素っ裸のまま再会を果たした、祝福すべき瞬間である。
人を信じるということは、それを想像することであるという一つの解答のように思えた。
それでも、自分の答えはまだ出ていない。