さよこ

友罪のさよこのレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
4.0
【このまま生きていくことのツラさ】

この映画、胸が苦しくなる。

少年時代に猟奇殺人を犯した少年Aが、今どんな気持ちで余生を送っているのか。劇中では、ものすごく予想外な心情を吐露していて。だけど妙に生々しくて。限りなく例の少年Aに近い存在なんじゃないかと思った。また、元記者がいう「世間が知りたいかじゃないんだよ、俺が知りたいんだよ!!」は心の叫び感がすごかった。

心揺さぶられるセリフとシーンがてんこ盛りだ。

*

この映画の凄いところは、「底辺のリアルさ」だったり、犯罪に直面したあとの「人生の狂いっぷり」が粛々と描かれているところ。

まともな社会復帰をどこかで諦めていて、行き場がないから町工場に勤めて、家も借りれないから寮の小さな寮を充てがわれて。「バッグの中、生活用品が詰まってる。ネカフェで生活してた?俺も一緒」てバッグの中身一つでそこまで分るのは同じ境遇にいた人だからか。

*

◆瑛太
瑛太、てこんな演技するんだ、ていうくらい惹き込まれた。抑揚のない話し方、辿々しい笑い声。感情がない人の感情の揺れ。内面から思わず外側に溢れちゃった1滴の感情。すごく繊細で大胆な演じ方だった。ラストの表情も秀逸。釘付け。

◆佐藤浩市
この映画の「圧倒的、佐藤浩市」感がスゴイ。彼がいないければ、この映画は成り立たない。そのくらい見事なコントラストだった。自分が犯したわけじゃない罪に愚直に向き合う役だが、もはや誰の赦しを得ようとしてるのかすら分からない。そんな混乱と誠実な意思の強さを見事に表現してる。

「犯罪を犯した人はいつまでも幸せになっちゃいけないんですか」の問いに間髪入れずに回答する凄み。きっと子供を愛しているからこそ、被害者側の気持ちを当事者以上に感じてしまったんだろう。

このお父さんが最初からタクシーの運転手をしていたわけあるまい、と思わせるところも好き。責任を感じて一家を離散させ、仕事もやめ、今の仕事に就いた、てところかな…とか想像させるほど佐藤浩市のタクシー運転手の似合わなさったら。たぶんそれも計算ずくの演技だと思うんだ。

*

(星減らしポイント)
佐藤浩市と瑛太の演技が凄すぎて、生田斗真に物足りなさを感じた。完全に食われちゃってる。生田斗真が隠してる過去の出来事を最後まで引っ張り、いよいよラストに種明かしするんだけど…うーん…そんなにインパクトある話じゃないからここまで引っ張る必要あるのかなあ。話の繋がり的には、草原で〇〇になるから流れ的にはいいんだろうけど。もったいぶり方がちょっとなぁ。。やや他の役者に食われ気味でした。

(余談)
個人的に、生田斗真は「脳男」の演技が最高すぎたから他の役を厳しい目で見てしまう傾向にある。反省。
さよこ

さよこ