せーじ

友罪のせーじのレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
3.4
220本目は、以前から気になっていたこの作品を。

とある理由でドロップアウトした男が偶然職場で出会った男には、ある秘密があって―というお話。

う~んわかりづらい…
おそらく作り手は、主人公たちと似たような悩みを抱えている人達それぞれにスポットライトを当て、それぞれのドラマを並列的に見せていくという「群像劇」をやりたかったのだろうと思うのだけれども、全くそれが上手くいってない様に感じてしまう。
そもそも、主要な登場人物たちが抱えている「過去の罪や負い目となる出来事」は、全く別のベクトルの出来事であり、それぞれを同列に扱うのは無理がある様に思う。それなのにそんなことはお構いなしとばかりにそれらを分け隔てなく並べて語っていくので、物語の全体像や根幹を成すものが掴みにくく非常にわかりづらいことになってしまっている。
加えて、それぞれのエピソードの「お膳立て」も、詰め込み過ぎているせいか強引な話運びが多かったし、その割にそれぞれの結末のつけ方がどれも中途半端なのも気になってしまった。もっとも、劇中描かれているそれぞれのエピソードは、そう簡単には解決できない問題であることは言うまでも無いことなのだが、それだったら、主人公である益田と鈴木の話だけに絞るべきだったのではないだろうか。少なくともタクシー運転手氏の話と、女性更生官の話はカットしても良かったのではないだろうかと思う。

それと細かいところでは、動画をスマホで見せただけなのに写真入りの記事を載せることが出来てしまった理屈が無かったりや、かなり盛大に頭を流血しているのにその後のシーンで包帯ひとつしていないところなど、演出としても「?」と思ってしまう場面があったのも残念。ストーカー行為はともかくとして、リベンジポルノやレイプをされてしまった段階で警察に届けたりしないのも不自然で、首をひねらざるを得なかった。そもそも、益田と鈴木がどのように心を通わせあったのかというきっかけの部分も、そんなに丁寧ではなかったし、主人公による説明的なモノローグと叫んで終わるラストには、「あ~あ…」と思いつつ思わず苦笑いをしてしまいました。。。

役者さん達は皆さんとても頑張ってらっしゃると思うのですが、作り手が扱おうとしている主題が手に余ってしまっているのが見え見えで、自分が観たいと思っていた「抱えているものを知ってしまった後、人には何ができるのか」という要素が全く描けていなかったのがとても残念でした。
群像劇なら「きみはいい子」、自分の罪と向き合うという主題なら「聲の形」の方がこの作品よりもずっと完成度が高いと思います。作り手には是非それらを観て頂きたいですね。
せーじ

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